聖書の探求 005b モーセの五書

モーセの五書

旧約聖書の歴史的時代区分を大まかに知っておくことは、旧約聖書を学ぶときに助けとなると思いますので、ご紹介しておきましょう。

  • アブラハム以前の時代・・創世記1~11章
  • 族長時代・・創世記12~50章
  • モーセの時代・・出エジプト記~申命記
  • 土師の時代・・ヨシュア~サムエル
  • 最初の三人の王の時代・・サウル、ダビデ、ソロモン
  • 分裂王国の時代・・北王国イスラエルと南王国ユダに分裂
  • 捕囚の時代・・北王国イスラエルはアッスリヤに、南王国ユダはその後バビロンに囚われ、七十年が過ぎる。この期間にエステル書やダニエル書が記された。
  • 捕囚後の時代・・捕囚の民は三回に分けて母国に帰還した。しかしバビロンに残った者も大勢いた。この期聞のことはエズラ、ネヘミヤなどが記している。

⑴ 「モーセの五書」の名称について

この呼び名は、旧約聖書の第一区分(創世記~申命記)を示しています。そしてこれをヘブル語聖書では「トーラー(律法)」と呼んでいます。それは、この五書が律法制定上の背景として物語や歴史的部分を含んでいるものの、主に律法的要素が強調されているからです。

⑵人間の側の記者について

五書の外的、内的性格からして、偉大な律法の賦与者モーセが記者であることは、確かです。

(イ)五書自身の証言

五書中に律法の主要部分がモーセによって書かれたことを示す章句があります。

出エジプト記17:14
出 17:14
【主】はモーセに仰せられた。「このことを記録として、書き物に書きしるし、ヨシュアに読んで聞かせよ。わたしはアマレクの記憶を天の下から完全に消し去ってしまう。」

ここではすでにモーセが書きしるしていた書物が存在していました。

出エジプト記24:4~8
出24:4 それで、モーセは【主】のことばを、ことごとく書きしるした。そうしてモーセは、翌朝早く、山のふもとに祭壇を築き、またイスラエルの十二部族にしたがって十二の石の柱を立てた。
24:5 それから、彼はイスラエル人の若者たちを遣わしたので、彼らは全焼のいけにえをささげ、また、和解のいけにえとして雄牛を【主】にささげた。
24:6 モーセはその血の半分を取って、鉢に入れ、残りの半分を祭壇に注ぎかけた。
24:7 そして、契約の書を取り、民に読んで聞かせた。すると、彼らは言った。「【主】の仰せられたことはみな行い、聞き従います。」
24:8 そこで、モーセはその血を取って、民に注ぎかけ、そして言った。「見よ。これは、これらすべてのことばに関して、【主】があなたがたと結ばれる契約の血である。」

4節でモーセが書きしるしたのは「契約の書」です。

出エジプト記34:27
出 34:27 【主】はモーセに仰せられた。「これらのことばを書きしるせ。わたしはこれらのことばによって、あなたと、またイスラエルと契約を結んだのである。」

ここでは34:10~26の第二の十戒とも呼ぶべき契約を、主はモーセに書きしるすように命じられています。

民数記33:1,2
民 33:1 モーセとアロンの指導のもとに、その軍団ごとに、エジプトの地から出て来たイスラエル人の旅程は次のとおりである。
33:2 モーセは【主】の命により、彼らの旅程の出発地点を書きしるした。その旅程は、出発地点によると次のとおりである。

ここではモーセがエジプトからモアブまでのイスラエルの民の全旅程を書きしるしたことが言われています。そうであるなら、その旅の途中に起こった記録、すなわち五書全体の記事もモーセが記したことは明らかです。

申命記31:9、24
申 31:9 モーセはこのみおしえを書きしるし、【主】の契約の箱を運ぶレビ族の祭司たちと、イスラエルのすべての長老たちとに、これを授けた。
同 31:24 モーセが、このみおしえのことばを書物に書き終えたとき、

これは、すでにその時存在していた五書中のある書のことを指しています。そして申命記自体がモーセの律法を認めていますから (申命記4:5、14、29:1)、これらの言葉が、申命記の部分的なものを指しているとしても、モーセがその相当の分量を書いたことは明らかです。

申 4:5 見なさい。私は、私の神、【主】が私に命じられたとおりに、おきてと定めとをあなたがたに教えた。あなたがたが、入って行って、所有しようとしているその地の真ん中で、そのように行うためである。

申 4:14 【主】は、そのとき、あなたがたにおきてと定めとを教えるように、私に命じられた。あなたがたが、渡って行って、所有しようとしている地で、それらを行うためであった。

申 29:1 これは、モアブの地で、【主】がモーセに命じて、イスラエル人と結ばせた契約のことばである。ホレブで彼らと結ばれた契約とは別である。

申命記31:22
申 31:22 モーセは、その日、この歌を書きしるして、イスラエル人に教えた。

この歌とは、申命記32章のこと。

創世記は五書を有機的にあらわしたものであり、他の四書は神が十戒を与えられた時にも、幕屋の建設を命じられた時にも、一貫してモーセが律法の仲介者としての主要人物の役割を果しています。

(ロ)五書以外の旧約聖書の証言

ヨシュア記 ヨシュアはモーセからその権威を得ており、モーセの律法がヨシュアの道標であり、基準だったのです。(11:15、20、14:2、21:2)

ヨシ 11:15 【主】がそのしもべモーセに命じられたとおりに、モーセはヨシュアに命じたが、ヨシュアはそのとおりに行い、【主】がモーセに命じたすべてのことばを、一言も取り除かなかった。

ヨシ 11:20 彼らの心をかたくなにし、イスラエルを迎えて戦わせたのは、【主】から出たことであり、それは主が彼らを容赦なく聖絶するためであった。まさに、【主】がモーセに命じたとおりに彼らを一掃するためであった。

ヨシ14:2 【主】がモーセを通して命じたとおりに、九部族と半部族とにくじで相続地を割り当てた。

ヨシ 21:2 カナンの地のシロで、彼らに告げて言った。「【主】は、私たちに住むべき町々と、家畜のための放牧地とを与えるよう、モーセを通して命じられました。」

ヨシュアはモーセが記した成文律法があったことを示しています。(1:7,8、8:31、32、34、22:9)

ヨシ 1:7 ただ強く、雄々しくあって、わたしのしもべモーセがあなたに命じたすべての律法を守り行え。これを離れて右にも左にもそれてはならない。それは、あなたが行く所ではどこででも、あなたが栄えるためである。
1:8 この律法の書を、あなたの口から離さず、昼も夜もそれを口ずさまなければならない。そのうちにしるされているすべてのことを守り行うためである。そうすれば、あなたのすることで繁栄し、また栄えることができるからである。

ヨシ  8:31 それは、【主】のしもべモーセがイスラエルの人々に命じたとおりであり、モーセの律法の書にしるされているとおりに、鉄の道具を当てない自然のままの石の祭壇であった。彼らはその上で、【主】に全焼のいけにえをささげ、和解のいけにえをささげた。
8:32 その所で、ヨシュアは、モーセが書いた律法の写しをイスラエルの人々の前で、石の上に書いた。
ヨシ 8:34 それから後、ヨシュアは律法の書にしるされているとおりに、祝福とのろいについての律法のことばを、ことごとく読み上げた。

ヨシ 22:9 それでルベン族、ガド族、マナセの半部族は、カナンの地にあるシロでイスラエル人と別れ、モーセを通して示された【主】の命令によって、彼らが得た自分の所有地、ギルアデの地へ行くために帰って行った。

その他、土師記3:4、列王記第一2:3、同第二14:6、21:8、エズラ記6:18、ネヘミヤ記13:1)

士3:4 これは、【主】がモーセを通して先祖たちに命じた命令に、イスラエルが聞き従うかどうか、これらの者によってイスラエルを試み、そして知るためであった。

Ⅰ列王2:3 あなたの神、【主】の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。あなたが何をしても、どこへ行っても、栄えるためである。

Ⅱ列王14:6 しかし、その殺害者の子どもたちは殺さなかった。モーセの律法の書にしるされているところによったのである。【主】はこう命じておられた。「父親が子どものために殺されてはならない。子どもが父親のために殺されてはならない。人が殺されるのは、ただ、自分の罪のためにでなければならない。」

同21:8 もし彼らが、わたしの命じたすべてのこと、わたしのしもべモーセが彼らに命じたすべての律法を、守り行いさえするなら、わたしはもう二度と、彼らの先祖に与えた地から、イスラエルの足を迷い出させない。」

エズ 6:18 また彼らは、エルサレムでの神への奉仕のため、祭司をその区分にしたがって、レビ人をその組にしたがってそれぞれ任命した。モーセの書にしるされているとおりである。

ネヘ 13:1 その日、民に聞こえるように、モーセの書が朗読されたが、その中に、アモン人とモアブ人は決して神の集会に加わってはならない、と書かれているのが見つかった。

預言書においては、モーセについての言及はまれですが、旧約における唯一の権威的律法はモーセの律法でした。(ダニエル書9:11~13、マラキ書4:4)

ダニ9:11 イスラエル人はみな、あなたの律法を犯して離れ去り、御声に聞き従いませんでした。そこで、神のしもべモーセの律法に書かれているのろいと誓いが、私たちの上にふりかかりました。私たちが神に罪を犯したからです。
9:12 神は、大きなわざわいを私たちにもたらすと、かつて私たちと、私たちをさばいたさばきつかさたちに対して告げられたみことばを、成就されたのです。エルサレムの上に下ったほどのわざわいは、今まで天下になかったことです。
9:13 このわざわいはすべて、モーセの律法に書かれているように、私たちの上に下りましたが、私たちは、不義から立ち返り、あなたの真理を悟れるよう、私たちの神、主に、お願いもしませんでした。

マラ4:4 あなたがたは、わたしのしもべモーセの律法を記憶せよ。それは、ホレブで、イスラエル全体のために、わたしが彼に命じたおきてと定めである。

(ハ) 新約聖書の証言

イエス・キリストは律法の句をモーセのものとして引用しています (マタイの福音書19:8、マルコの福音書10:5など)。

マタ18:8 もし、あなたの手か足の一つがあなたをつまずかせるなら、それを切って捨てなさい。片手片足でいのちに入るほうが、両手両足そろっていて永遠の火に投げ入れられるよりは、あなたにとってよいことです。

マル10:5 イエスは言われた。「モーセは、あなたがたの心がかたくななので、この命令をあなたがたに書いたのです。

新約聖書の他の部分も、イエス・キリストの証言と一致しています (使徒の働き3:22、13:39、15:5~21、26:22、28;23、ローマ人への手紙10:5、19、コリント人への手紙第一9:9、同第二3:15、ヨハネの黙示録15:3)。

使 3:22 モーセはこう言いました。『神である主は、あなたがたのために、私のようなひとりの預言者を、あなたがたの兄弟たちの中からお立てになる。この方があなたがたに語ることはみな聞きなさい。

使 13:39 モーセの律法によっては解放されることのできなかったすべての点について、信じる者はこの方によって、解放されるのです。

使 15:5 しかし、パリサイ派の者で信者になった人々が立ち上がり、「異邦人にも割礼を受けさせ、また、モーセの律法を守ることを命じるべきである」と言った。
15:6 そこで使徒たちと長老たちは、この問題を検討するために集まった。
15:7 激しい論争があって後、ペテロが立ち上がって言った。「兄弟たち。ご存じのとおり、神は初めのころ、あなたがたの間で事をお決めになり、異邦人が私の口から福音のことばを聞いて信じるようにされたのです。
15:8 そして、人の心の中を知っておられる神は、私たちに与えられたと同じように異邦人にも聖霊を与えて、彼らのためにあかしをし、
15:9 私たちと彼らとに何の差別もつけず、彼らの心を信仰によってきよめてくださったのです。
15:10 それなのに、なぜ、今あなたがたは、私たちの父祖たちも私たちも負いきれなかったくびきを、あの弟子たちの首に掛けて、神を試みようとするのです。
15:11 私たちが主イエスの恵みによって救われたことを私たちは信じますが、あの人たちもそうなのです。」
15:12 すると、全会衆は沈黙してしまった。そして、バルナバとパウロが、彼らを通して神が異邦人の間で行われたしるしと不思議なわざについて話すのに、耳を傾けた。
15:13 ふたりが話し終えると、ヤコブがこう言った。「兄弟たち。私の言うことを聞いてください。
15:14 神が初めに、どのように異邦人を顧みて、その中から御名をもって呼ばれる民をお召しになったかは、シメオンが説明したとおりです。
15:15 預言者たちのことばもこれと一致しており、それにはこう書いてあります。
15:16 『この後、わたしは帰って来て、倒れたダビデの幕屋を建て直す。すなわち、廃墟と化した幕屋を建て直し、それを元どおりにする。
15:17 それは、残った人々、すなわち、わたしの名で呼ばれる異邦人がみな、主を求めるようになるためである。
15:18 大昔からこれらのことを知らせておられる主が、こう言われる。』
15:19 そこで、私の判断では、神に立ち返る異邦人を悩ませてはいけません。
15:20 ただ、偶像に供えて汚れた物と不品行と絞め殺した物と血とを避けるように書き送るべきだと思います。
15:21 昔から、町ごとにモーセの律法を宣べる者がいて、それが安息日ごとに諸会堂で読まれているからです。」

使 26:22 こうして、私はこの日に至るまで神の助けを受け、堅く立って、小さい者にも大きい者にもあかしをしているのです。そして、預言者たちやモーセが、後に起こるはずだと語ったこと以外は何も話しませんでした。

使 28:23 そこで、彼らは日を定めて、さらに大ぜいでパウロの宿にやって来た。彼は朝から晩まで語り続けた。神の国のことをあかしし、また、モーセの律法と預言者たちの書によって、イエスのことについて彼らを説得しようとした。

ロマ 10:5 モーセは、律法による義を行う人は、その義によって生きる、と書いています。

ロマ 10:19 でも、私はこう言いましょう。「はたしてイスラエルは知らなかったのでしょうか。」まず、モーセがこう言っています。「わたしは、民でない者のことで、あなたがたのねたみを起こさせ、無知な国民のことで、あなたがたを怒らせる。」

Ⅰコリ 9:9 モーセの律法には、「穀物をこなしている牛に、くつこを掛けてはいけない」と書いてあります。いったい神は、牛のことを気にかけておられるのでしょうか。

Ⅱコリ 3:15 かえって、今日まで、モーセの書が朗読されるときはいつでも、彼らの心にはおおいが掛かっているのです。

黙 15:3 彼らは、神のしもべモーセの歌と小羊の歌とを歌って言った。「あなたのみわざは偉大であり、驚くべきものです。主よ。万物の支配者である神よ。あなたの道は正しく、真実です。もろもろの民の王よ。

新約聖書も、モーセが記した律法の書が存在したことを立証しています。事実、新約聖書においては、「モーセ」という名前と「律法」という語とは、同じ意味に用いられているのです。

しかしモーセが五書の記者であるということはモーセが自ら一字一句すべてを書き記したというわけではありません。モーセが創世記を書き記すとき、すでに存在していた記録文のある部分を用いたかもしれませんし、またモーセより後の編さん者がわずかな加筆や改訂をした(たとえば申命記34:5~12)場合もあるでしょう。しかしどちらの場合においても神の霊感のもとに行なわれたものであり、その記者はやはりモーセであるということができます。

申 34:5 こうして、【主】の命令によって、【主】のしもべモーセは、モアブの地のその所で死んだ。
34:6 主は彼をベテ・ペオルの近くのモアブの地の谷に葬られたが、今日に至るまで、その墓を知った者はいない。
34:7 モーセが死んだときは百二十歳であったが、彼の目はかすまず、気力も衰えていなかった。
34:8 イスラエル人はモアブの草原で、三十日間、モーセのために泣き悲しんだ。そしてモーセのために泣き悲しむ喪の期間は終わった。
34:9 ヌンの子ヨシュアは、知恵の霊に満たされていた。モーセが彼の上に、かつて、その手を置いたからである。イスラエル人は彼に聞き従い、【主】がモーセに命じられたとおりに行った。
34:10 モーセのような預言者は、もう再びイスラエルには起こらなかった。彼を【主】は、顔と顔とを合わせて選び出された。
34:11 それは【主】が彼をエジプトの地に遣わし、パロとそのすべての家臣たち、およびその全土に対して、あらゆるしるしと不思議を行わせるためであり、
34:12 また、モーセが、イスラエルのすべての人々の目の前で、力強い権威と、恐るべき威力とをことごとくふるうためであった。

(3)モーセの五書の特長

  1. 創世記・・神が創造された世界に罪が侵入したことと、その結果
  2. 出エジプト記・・血によるあがない
  3. レビ記・・神に近づき、礼拝し聖化されること
  4. 民数記・・神の民の放浪生活
  5. 申命記・・神に従うときの祝福と不従順に伴う悲惨

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