音声:信仰の列伝(39) 「主にゆだねたダビデ」(サムエル記第一、24章)へブル人への手紙11章32~34節

2017年5月14日(日) 午前10時半
礼拝メッセージ  眞部 明 牧師

へブル人への手紙11章32~34節
11:32 これ以上、何を言いましょうか。もし、ギデオン、バラク、サムソン、エフタ、またダビデ、サムエル、預言者たちについても話すならば、時が足りないでしょう。
11:33 彼らは、信仰によって、国々を征服し、正しいことを行い、約束のものを得、獅子の口をふさぎ、
11:34 火の勢いを消し、剣の刃をのがれ、弱い者なのに強くされ、戦いの勇士となり、他国の陣営を陥れました。
【新改訳改訂第3版】

<インフォメーション>

ダビデに「すべてのことを主にゆだねる経験をする機会」は、ダビデがエン・ゲディの荒野のほら穴の中にいた時に、ダビデのいのちを狙っているサウル王を殺す、絶好のチャンスが訪れた時でした。

ダビデの部下たちは、ダビデに勧めました。「ダビデの部下はダビデに言った。『今こそ、主があなたに、『見よ。わたしはあなたの敵をあなたの手に渡す。彼をあなたのよいと思うようにせよ。』と言われた、その時です。』そこでダビデは立ち上がり、サウルの上着のすそを、こっそり切り取った。」(サムエル第一、24:4)

このことばは、ダビデの心の微妙な動きを表わしています。この時は、これを逃せば、二度と来ないかも知れない絶好のチャンスであると、だれもが思ったでしょう。そして、罪もなく、いのちを狙われて、追いかけ回されているダビデに、神様が与えられた解放の機会だと思ったとしても」だれも疑問に思わないでしょう。まさか神が、このような機会を与えることによって、ダビデの深い心の性質を探っておられると、考えられることはできないでしょう。

事実、主はそんなにして、ダビデを試みたとは書いていません。ですから、ダビデは神が求めておられる、主を愛して、畏(おそ)れている信仰を表わしたのです。この信仰は、アブラハムがイサクをモリヤの山で、全焼のいけにえにささげたのに匹敵する、愛の信仰、経験の奥義を表わした信仰です。信仰はここまで行くものだと、思わされます。

この時、ダビデ自身も、部下たちも、サウルの追跡の危険と不安とに疲れ果てていたでしょう。もう気持ちの余裕がなくなってしまっており、一分でも早く解放されて、安らぎを味わいたかったでしよう。それを実現できるチャンスが、目の前にあったのです。それをみすみす見逃す手はないとだれもが思うでしょう。

またこの時、サウル王を一突きにして殺せば、一挙にして、ダビデがイスラエルの王となるチャンスが来ることも事実です。

「その時です」は、時は過ぎて行く、動いて行く、その一瞬を活かさないと、次の時は自分が危険になるのです。だれもが、この時は神がダビデに与えられた、特別な時だと思ったはずです。「そこでダビデは立ち上がり」とありますから、ダビデも、部下たちの勧めのことばに、一時、その気になったことは確かです。

しかし、ダビデの心に突然、きわどい聖霊のブレーキがかかって、サウルを打つことを思いとどまり、サウル王の上着のすそをこっそり切り取っただけで止めたのです。

もしこの時、ダビデがサウルを倒して、イスラエルの王位についていれば、それは神の油注ぎの成就によって、王になったのではなく、クーデターによって、王国を乗っ取ったことになってしまいます。

そうすれば、一時的にサウル王の追跡から解放されますが、直ちにダビデは、サウルの側近たちやサウルの家の者、サウルの同族のベニヤミン人から命を狙われ、イスラエル王国、ダビデ王国は争いと混乱状態が続き、歴史が記しているような、平和で、繋栄した安定したダビデ王国を築くことはできなかったでしょう。

神のご計画は、サウルを倒すクーデターによってではなく、神の約束の成就として、ダビデが王となることによってのみ、安定して、その力を発揮することができるのです。政治的権力者の敵を引き倒して、王位に着けば、ますます激しい憎しみの争いの中に巻き込まれてしまいます。それ故、目の前に訪れた格好のチャンスに見えるものも、多くのわなが隠されていることを、弁(わきま)えなければなりません。ダビデはそこまで分かっていなかったかも知れませんが、主を第一に畏(おそ)れることによって、この重大な危機から免れたのです。

私が一時の憎しみや、怒りの感情で、自分で復讐したり、仕返ししたりするなら、必ず、争い、混乱を激しくします(ローマ12:19~21)。

ダビデは、主を畏(おそ)れることによって、いつも、主をわが前に置くことによって、この人のカではできないことを、成し遂げたのです。

もし、この時、ダビデがサウルを倒して、イスラエルの王になっていれば、彼は十分に成長しないまま、指導者の地位に着き、国民の心が分からないまま、国の政治を行なわなければならなかったのです。

<今週の活用聖句>
ペテロ第一、5章6節
「ですから、あなたがたは、神の力強い御手の下にへりくだりなさい。神が、ちょうど良い時に、あなたがたを高くしてくださるためです。」

上の写真は、フランスの画家James Tissot (1836–1902)による「David and Saul in the Cave(洞穴でのダビデとサウル)」(New YorkのJewish Museum蔵))

現在のエン・ゲディの様子です。崖の壁面には、たくさんのほら穴がありますが、このうちのどれかにダビデがいたのでしょうか。

地の塩港南キリスト教会
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