聖書の探求(121) 民数記26章 カナン入国直前の人口調査

この章では、二回目の人口調査が行われています。これはモアブの草原で行われた、カナン入国直前の人口調査です。こうして、いよいよカナン入国の準備が整えられていくのです。26~36章は、カナン入国のための準備を記しています。そして26~27章は、カナンの征服と土地の分配の準備です。そのために先ず、神は再び人口調査を命じられました。それはシナイの荒野の旅の結果、各部族の人数が相当変動していたからです。

イスラエル人の人口調査は、二回行われています。出エジプト記30章12節に、人口調査のことについて記されていますが、これは規定だけであって、「人口調査をせよ。」との命令ではなく、またすぐに、その直後に、人口調査をしたという記録がありません。

出 30:12 「あなたがイスラエル人の登録のため、人口調査をするとき、その登録にあたり、各人は自分自身の贖い金を【主】に納めなければならない。これは、彼らの登録によって、彼らにわざわいが起こらないためである。

第一回は、民数記1、2章で、これは軍事的な人口調査でした。「軍務につくことのできる者」(1:28)の人数を知るためでした。

民 1:28 イッサカルの子孫については、氏族ごと、父祖の家ごとの、その家系の者であって、名を数えられた二十歳以上ですべて軍務につくことのできる者であった。

第二回目も、多少軍事的要求を含んでいたと思われます。

民 26:1 この神罰の後、【主】はモーセと祭司アロンの子エルアザルに告げて仰せられた。
26:2 「イスラエル人の全会衆につき、父祖の家ごとに二十歳以上で、イスラエルにあって軍務につくことのできる者すべての人口調査をせよ。」

それはカナン入国の時の戦いに備えるためです。しかしそれとともに、カナン占領後に、領土を分配するための政治的な要素が強かったと思われます。このことは、第一回目の人口調査では、各部族の氏族が記されていなかったのに、ここではその詳細が記されていることでも分かります。

民 26:3 そこでモーセと祭司エルアザルは、エリコをのぞむヨルダンのほとりのモアブの草原で彼らに告げて言った。
26:4 「【主】がモーセに命じられたように、二十歳以上の者を数えなさい。」エジプトの国から出て来たイスラエル人は、
26:5 イスラエルの長子ルベン。ルベン族は、エノクからはエノク族、パルからはパル族、
26:6 ヘツロンからはヘツロン族、カルミからはカルミ族。
26:7 これがルベン人諸氏族で、登録された者は、四万三千七百三十人であった。
26:8 パルの子孫はエリアブ。
26:9 エリアブの子はネムエルとダタンとアビラムであった。このダタンとアビラムは会衆に選ばれた者であったが、彼らはコラの仲間に入り、モーセとアロンに逆らい、【主】に逆らったのである。
26:10 そのとき、地は口をあけて、彼らをコラとともにのみこみ、その仲間は死んだ。すなわち火が二百五十人の男を食い尽くした。こうして彼らは警告のしるしとなった。
26:11 しかしコラの子たちは死ななかった。
26:12 シメオン族の諸氏族は、それぞれ、ネムエルからはネムエル族、ヤミンからはヤミン族、ヤキンからはヤキン族、
26:13 ゼラフからはゼラフ族、サウルからはサウル族。
26:14 これがシメオン人諸氏族で、二万二千二百人であった。
26:15 ガド族の諸氏族は、それぞれ、ツェフォンからはツェフォン族、ハギからはハギ族、シュニからはシュニ族、
26:16 オズニからはオズニ族、エリからはエリ族、
26:17 アロデからはアロデ族、アルエリからはアルエリ族。
26:18 これがガド諸氏族で、登録された者は、四万五百人であった。
26:19 ユダの子はエルとオナン。しかしエルとオナンはカナンの地で死んだ。
26:20 ユダ族の諸氏族は、それぞれ、シェラからはシェラ族、ペレツからはペレツ族、ゼラフからはゼラフ族。
26:21 ペレツ族は、ヘツロンからはヘツロン族、ハムルからはハムル族。
26:22 これがユダ諸氏族で、登録された者は、七万六千五百人であった。
26:23 イッサカル族の諸氏族は、それぞれ、トラからはトラ族、プワからはプワ族、
26:24 ヤシュブからはヤシュブ族、シムロンからはシムロン族。
26:25 これがイッサカル諸氏族で、登録された者は、六万四千三百人であった。
26:26 ゼブルン族の諸氏族は、それぞれ、セレデからはセレデ族、エロンからはエロン族、ヤフレエルからはヤフレエル族。
26:27 これがゼブルン人諸氏族で、登録された者は、六万五百人であった。
26:28 ヨセフの子孫の諸氏族は、それぞれ、マナセとエフライム。
26:29 マナセ族は、マキルからはマキル族。マキルはギルアデを生んだ。ギルアデからはギルアデ族。
26:30 ギルアデ族は次のとおりである。イエゼルからはイエゼル族、ヘレクからはヘレク族、
26:31 アスリエルからはアスリエル族、シェケムからはシェケム族、
26:32 シェミダからはシェミダ族、ヘフェルからはヘフェル族。
26:33 ヘフェルの子ツェロフハデには、息子がなく、娘だけであった。ツェロフハデの娘の名は、マフラ、ノア、ホグラ、ミルカ、ティルツァであった。
26:34 これがマナセ諸氏族で、登録された者は、五万二千七百人であった。
26:35 エフライム族の諸氏族は、それぞれ、次のとおりである。シュテラフからはシュテラフ族、ベケルからはベケル族、タハンからはタハン族。
26:36 シュテラフ族は次のとおりである。エランからはエラン族。
26:37 これがエフライム諸氏族で、登録された者は、三万二千五百人であった。これがヨセフの子孫の諸氏族である。
26:38 ベニヤミン族の諸氏族は、それぞれ、ベラからはベラ族、アシュベルからはアシュベル族、アヒラムからはアヒラム族、
26:39 シェフファムからはシュファム族、フファムからはフファム族。
26:40 ベラの子はアルデとナアマン。アルデからはアルデ族、ナアマンからはナアマン族。
26:41 これがベニヤミン族の諸氏族で、登録された者は、四万五千六百人であった。
26:42 ダン族の諸氏族は、次のとおりである。シュハムからはシュハム族。これがダン族の諸氏族である。
26:43 すべてのシュハム人諸氏族で、登録された者は、六万四千四百人であった。
26:44 アシェル族の諸氏族は、それぞれ、イムナからはイムナ族、イシュビからはイシュビ族、ベリアからはベリア族。
26:45 ベリア族のうち、ヘベルからはヘベル族、マルキエルからはマルキエル族。
26:46 アシェルの娘の名はセラフであった。
26:47 これがアシェル諸氏族で、登録された者は、五万三千四百人であった。
26:48 ナフタリ族の諸氏族は、それぞれ、ヤフツェエルからはヤフツェエル族、グニからはグニ族、
26:49 エツェルからはエツェル族、シレムからはシレム族。
26:50 これがナフタリ族の諸氏族で、登録された者は、四万五千四百人であった。
26:51 これがイスラエル人の登録された者で、六十万一千七百三十人であった。

 5~51節、人口調査はルベン族から始まり、ナフタリ族で終わっており、人口は第一回目の時より1820人減少していました。

(51節と1章46節を比較してください。)

民 1:46 すなわち、登録された者の総数は、六十万三千五百五十人であった。

民 26:51 これがイスラエル人の登録された者で、六十万一千七百三十人であった。

このことをどう見るかは、いろいろな見解があると思いますが、第一回の人口調査から約38年間、シナイの荒野という厳しい地帯をさまよい、更にエジプトを出た時、成人だった者はカレブとヨシュア以外全員、荒野で死に絶えていたのですから、ほとんど全員の者がシナイの荒野という厳しい環境の中で生まれ(一部、出エジプトの時、子どもであった
者もいたでしょうが)、育ったイスラエル二世ということができます。それにしては減少した人数が1820人というわずかであったことは、神の憐みが加えられていたとしか考えられません。しかし減少したことは、神の祝福が制限されていたことを示しています。

この記事の中では、特別な事件を引き起こした人物の名前とその出来事をいくつか挿入しているのが特長です。

9~11節は、ダタンとアビラムとコラについて記しています。

民 26:9 エリアブの子はネムエルとダタンとアビラムであった。このダタンとアビラムは会衆に選ばれた者であったが、彼らはコラの仲間に入り、モーセとアロンに逆らい、【主】に逆らったのである。
26:10 そのとき、地は口をあけて、彼らをコラとともにのみこみ、その仲間は死んだ。すなわち火が二百五十人の男を食い尽くした。こうして彼らは警告のしるしとなった。
26:11 しかしコラの子たちは死ななかった。

ダタンとアビラムは会衆から選ばれたリーダーであったこと。それにも拘らず高慢になって、コラと一緒になって、モーセとアロンと、そして主に逆らったこと。そしてそれに対して起きた神のさばきの恐ろしさを生々と記しています。それは民全体への警告のしるしとなっていたことも記しています。

11節、「しかしコラの子たちは死ななかった。」ここに神の憐みが見られます。あるいは父親のコラだけが主に逆らい、コラの子たちは父に同調しなかったのかも知れません。後に、このコラの子たちは讃美の奉仕者となっています。主の憐みを無にせず、忠実に主に従って、主の栄光を現わす者になりたいものです。

「私は神の恵みを無にはしません。」(ガラテヤ2:21)

52~56節、続いて、主はモーセにカナンの地の分割について命じています。

民 26:52 【主】はモーセに告げて仰せられた。
26:53 「この人々に、その地は、名の数にしたがって、相続地として割り当てられなければならない。
26:54 大きい部族にはその相続地を多くし、小さい部族にはその相続地を少なくしなければならない。おのおの登録された者に応じて、その相続地は与えられなければならない。
26:55 ただし、その地はくじで割り当て、彼らの父祖の部族の名にしたがって、受け継がなければならない。
26:56 その相続地はくじによって、大部族と小部族の間で割り当てられなければならない。」

ここには二つの原則が指定されています。

第一は、名の数にしたがって、すなわち、部族の大きさに従って、その広さが決められます(53、54節)。

第二に、地はくじによって割り当てられ、父親の部族の名にしたがって受け継ぐことが命じられています。なぜ、くじにされたのかは説明がありませんので分かりませんが、たとい主がお決めになって、それをモーセとアロンが発表しても、人々はモーセとアロンに文句を言ったでしょう。それ故、くじを通して神が彼らに、その土地を割り当てる方法を選ばれたものと思われます。私たちはいかなる割り当てを受けても、文句を言わず、喜んで受けて、その奉仕の役割を果たしたいものです。

57~62節、レビ族の人口調査は、別に行われています。それはレビ人には相続地が与えられなかったからです。

民 26:57 さてレビ人で氏族ごとに登録された者は、次のとおりである。ゲルションからはゲルション族、ケハテからはケハテ族、メラリからはメラリ族。
26:58 レビ諸氏族は次のとおりである。すなわち、リブニ族、ヘブロン族、マフリ族、ムシ族、およびコラ族。ケハテはアムラムを生んだ。
26:59 アムラムの妻の名はヨケベデで、レビの娘であった。彼女はエジプトでレビに生まれた者であって、アムラムにアロンとモーセとその姉妹ミリヤムを産んだ。
26:60 アロンにはナダブとアビフとエルアザルとイタマルが生まれた。
26:61 ナダブとアビフは【主】の前に異なった火をささげたときに死んだ。
26:62 その登録された者は、一か月以上のすべての男子二万三千人であった。彼らは、ほかのイスラエル人の中に登録されなかった。彼らにはイスラエル人の間で相続地が与えられていなかったからである。

レビ人たちは神の幕屋に関する働きが、主から与えられた相続財産でした。あなたなら、広い土地が相続地として与えられるのと、神への奉仕が与えられるのと、どちらを価値高く思い、どちらを喜ぶでしょうか。それによって、あなたが、肉的な人間か、霊的に潔められた人であるか、はっきりしてきます。

一般の部族の人々は、二十才以上の戦いに出ることのできる男子が数えられているのに
対して、レビ人は一ケ月以上のすべての男子が数えられ、その人数は二万三千人で、最初の人口調査より千人増加しています(3:39)。

民 3:39 モーセとアロンが【主】の命により、氏族ごとに登録した、すべての登録されたレビ人は、一か月以上のすべての男子で、二万二千人であった。

イスラエル人全体としては1820人減少していたのに比べて、レビ人が千人も増えていたことは特異なことです。このことはカナンの地に入ってからの信仰生活の重要性を示しているのではないでしょうか。

今日、教会においても、先ず、潔められて、よく訓練された牧師、伝道者、教師、リーダーが育つことが急務です。そうすれば、キリスト教会はこの日本にあっても大いに主の栄光を現わす働きができるようになります。

「私は、『だれを遣わそう。だれが、われわれのために行くだろう。』と言っておられる主の声を聞いたので、言った。『ここに、私がおります。私を遣わしてください。』」(イザヤ書6:8)

「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。」(マタイ9:37,38)

59節で、アロンとモーセとミリアムの両親、アムラムとヨケベデの名前が記されています。

民 26:59 アムラムの妻の名はヨケベデで、レビの娘であった。彼女はエジプトでレビに生まれた者であって、アムラムにアロンとモーセとその姉妹ミリヤムを産んだ。

これは神の器としてこの世に送り出した両親の受ける大いなる名誉です。アムラムとヨケベデ、サムエルの母ハンナ、ダビデの父エッサイ、テモテの母ユニケと祖母ロイス、アウグスチヌスの母モニカ、ジョンとチャールス・ウェスレーの母スザンナ、ブラムウェル・ブースの母キャサリンの名は永遠に覚えられている名前です。しかしたといこのように有名な神の人の親でなくても、多くの無名の神の人の母は神の御前に永遠に覚えられます。そしてその子を神を畏れ、神に仕える人に育てた親の苦労は必ず、大いなる誉れをもって報いられるのです。どうぞ、恐れず、あなたとその子を神におささげください。その子は地上で、最もすばらしい働きをする人となり、輝く生涯を送る人となるのです。

しかしそのすぐ後に、61節で最も不名誉な二人の名前が記されています。その二人と
は、アロンの二人の子ナダブとアビフです。

民 26:61 ナダブとアビフは【主】の前に異なった火をささげたときに死んだ。

彼らは敬虔な祭司の家庭に生まれながら、高慢になり、主の前に異なった火(神の前にささげてはならない火)をささげて滅ばされたのです。最も誉れ高い家系の中に、最も不名誉な者が出るということは、悲しいことですが、これもまた事実です。預言者サムエルの二人の息子もまた、父の敬虔な道に歩まず、神から離れたのです(サムエル第一8:3)。

Ⅰサム 8:3 この息子たちは父の道に歩まず、利得を追い求め、わいろを取り、さばきを曲げていた。

このような子どもを持つ親の心は、剣で刺し殺されるようでしょう。願わくは、すべての子どもが神を畏れ、神のご用ができるように育て、導いていきたいものです。

63~65節、第二回目の人口調査の時には、イスラエルの民は全く新しい国民となっていました。

民 26:63 これがモーセと祭司エルアザルが、エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの草原で、イスラエル人を登録したときにモーセと祭司エルアザルによって登録された者である。
26:64 しかし、このうちには、モーセと祭司アロンがシナイの荒野でイスラエル人を登録したときに登録された者は、ひとりもいなかった。
26:65 それは【主】がかつて彼らについて、「彼らは必ず荒野で死ぬ」と言われていたからである。彼らのうち、ただエフネの子カレブとヌンの子ヨシュアのほかには、だれも残っていなかった。

古くから残っていたのはカレブとヨシュアだけになっていました。カデシュで不信仰に陥った民に、主は「彼らは必ず荒野で死ぬ」と宣告されたことが成就したのです(14:29~30)。

民 14:29 この荒野であなたがたは死体となって倒れる。わたしにつぶやいた者で、二十歳以上の登録され数えられた者たちはみな倒れて死ぬ。
14:30 ただエフネの子カレブと、ヌンの子ヨシュアのほかは、あなたがたを住まわせるとわたしが誓った地に、だれも決して入ることはできない。

ここにも必ず神のみことばが実現することの証拠が示されています。さらに信仰を堅く貫いたカレブとヨシュアがカナンの国を相続したことも、神のみことばの真実さを示しています。恐るべきことです。神は祝福においても、裁きにおいても、約束のみことば通りに行われるのです。

「主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」(ルカ1:45)

私たちは神のみことばをこのように信じて、毎日、みことばを活用した生活を行わなければなりません。

またパウロは、古い人を脱いで、新しい人を着るべきことを教えています。

「あなたがたは、古い人をその行ないといっしょに脱ぎ捨てて、新しい人を着たのです。新しい人は、造り主のかたちに似せられてますます新しくされ、真の知識に至るのです。」(コロサイ3:10)

私たちは古い人(自己中心の自我)を持ったままで、神の国に入ることはできません。全く新しい人となってこそ、神の国に入ることが許されるのです。不信仰は必ず滅ぼされ、信仰は必ず勝利を得ます。この神の約束は永遠に不変です。

(まなべあきら 1994.4.1)
(聖書箇所は【新改訳改訂第3版】を引用。)


 

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