聖書の探求(016a) 創世記12章 アブラハムの生涯

12章から25章11節までの概要

12章からは神の取り扱いが、全人類的範囲から、アブラムという一人の人物をとおして神の民を形成していく方向に移っていきます。そこでまず、神の選民の最初の代表人物となるアブラハムの生涯について、おおまかに触れておきましょう。

アブラハムは三重の約束を神から受け、彼の故郷カルデヤのウルから召し出され、途中カランにとどまっていましたが、父テラの死後、再び旅立ってカナンの地に到着しました。
彼の信仰は離別という試練によって確立され、神の約束を明確なものとしていきました。

1、 第一の約束 - 土地

創 12:7 そのころ、【主】がアブラムに現れ、そして「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える」と仰せられた。アブラムは自分に現れてくださった【主】のために、そこに祭壇を築いた。

創 13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。

創 13:17 立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。」

創 15:7 また彼に仰せられた。「わたしは、この地をあなたの所有としてあなたに与えるために、カルデヤ人のウルからあなたを連れ出した【主】である。」

創 15:18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで仰せられた。「わたしはあなたの子孫に、この地を与える。エジプトの川から、あの大川、ユーフラテス川まで。

創 17:8 わたしは、あなたが滞在している地、すなわちカナンの全土を、あなたとあなたの後のあなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。」

創 24:7 私を、私の父の家、私の生まれ故郷から連れ出し、私に誓って、『あなたの子孫にこの地を与える』と約束して仰せられた天の神、【主】は、御使いをあなたの前に遣わされる。あなたは、あそこで私の息子のために妻を迎えなさい。

創28:4 神はアブラハムの祝福を、おまえと、おまえとともにいるおまえの子孫とに授け、神がアブラハムに下さった地、おまえがいま寄留しているこの地を継がせてくださるように。」

創 28:13 そして、見よ。【主】が彼のかたわらに立っておられた。そして仰せられた。「わたしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神、【主】である。わたしはあなたが横たわっているこの地を、あなたとあなたの子孫とに与える。

(その試み)

(1) 彼はその地に寄留する者であった。

創 12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラムはエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。この地のききんは激しかったからである。

創 17:8 わたしは、あなたが滞在している地、すなわちカナンの全土を、あなたとあなたの後のあなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。」

創 20:1 アブラハムは、そこからネゲブの地方へ移り、カデシュとシュルの間に住みついた。ゲラルに滞在中、

創 21:23 それで今、ここで神によって私に誓ってください。私も、私の親類縁者たちをも裏切らないと。そして私があなたに尽くした真実にふさわしく、あなたは私にも、またあなたが滞在しているこの土地にも真実を尽くしてください。」
21:24 するとアブラハムは、「私は誓います」と言った。

創 23:4 「私はあなたがたの中に居留している異国人ですが、あなたがたのところで私有の墓地を私に譲っていただきたい。そうすれば私のところから移して、死んだ者を葬ることができるのです。」

(2) その地は他の者によって占領されていた。

創 12:6 アブラムはその地を通って行き、シェケムの場、モレの樫の木のところまで来た。当時、その地にはカナン人がいた。

創 13:7 そのうえ、アブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちとの間に、争いが起こった。またそのころ、その地にはカナン人とペリジ人が住んでいた。

創 15:18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで仰せられた。「わたしはあなたの子孫に、この地を与える。エジプトの川から、あの大川、ユーフラテス川まで。
15:19 ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、
15:20 ヘテ人、ペリジ人、レファイム人、
15:21 エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人を。」

(3) 彼はききんの為、二度国外に出た。

創 12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラムはエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。この地のききんは激しかったからである。
12:11 彼はエジプトに近づき、そこに入ろうとするとき、妻のサライに言った。「聞いておくれ。あなたが見目麗しい女だということを私は知っている。
12:12 エジプト人は、あなたを見るようになると、この女は彼の妻だと言って、私を殺すが、あなたは生かしておくだろう。
12:13 どうか、私の妹だと言ってくれ。そうすれば、あなたのおかげで私にも良くしてくれ、あなたのおかげで私は生きのびるだろう。」

創 20:1 アブラハムは、そこからネゲブの地方へ移り、カデシュとシュルの間に住みついた。ゲラルに滞在中、
20:2 アブラハムは、自分の妻サラのことを、「これは私の妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、使いをやって、サラを召し入れた。
20:3 ところが、神は、夜、夢の中で、アビメレクのところに来られ、そして仰せられた。「あなたが召し入れた女のために、あなたは死ななければならない。あの女は夫のある身である。」

(4)彼の子孫は異邦の地で寄留者となり、奴隷とされ、四百年間苦しめられる。

創 15:13 そこで、アブラムに仰せがあった。「あなたはこの事をよく知っていなさい。あなたの子孫は、自分たちのものでない国で寄留者となり、彼らは奴隷とされ、四百年の間、苦しめられよう。

(5)彼が住むカナンの地は遠くの地の王達によって侵略されていた。

(創14:1~24)
創 14:1 さて、シヌアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティデアルの時代に、
14:2 これらの王たちは、ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シヌアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラの王、すなわち、ツォアルの王と戦った。
14:3 このすべての王たちは連合して、シディムの谷、すなわち、今の塩の海に進んだ。
・・・・・

(6)彼は墓地を買わなければならなかった。

(23:1~20)
創 23:1 サラの一生、サラが生きた年数は百二十七年であった。
23:2 サラはカナンの地のキルヤテ・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは来てサラのために嘆き、泣いた。
23:3 それからアブラハムは、その死者のそばから立ち上がり、ヘテ人たちに告げて言った。
23:4 「私はあなたがたの中に居留している異国人ですが、あなたがたのところで私有の墓地を私に譲っていただきたい。そうすれば私のところから移して、死んだ者を葬ることができるのです。」
・・・・・

2、 第二の約束 - 多くの子孫が与えられる

創 12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。

創 13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。

創 15:5 そして、彼を外に連れ出して仰せられた。「さあ、天を見上げなさい。星を数えることができるなら、それを数えなさい。」さらに仰せられた。「あなたの子孫はこのようになる。」

創 17:2 わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に立てる。わたしは、あなたをおびただしくふやそう。」
17:3 アブラムは、ひれ伏した。神は彼に告げて仰せられた。
17:4 「わたしは、この、わたしの契約をあなたと結ぶ。あなたは多くの国民の父となる。

創 17:16 わたしは彼女を祝福しよう。確かに、彼女によって、あなたにひとりの男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福する。彼女は国々の母となり、国々の民の王たちが、彼女から出て来る。」

創 18:18 アブラハムは必ず大いなる強い国民となり、地のすべての国々は、彼によって祝福される。

創 22:17 わたしは確かにあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を、空の星、海辺の砂のように数多く増し加えよう。そしてあなたの子孫は、その敵の門を勝ち取るであろう。

創26:4 そしてわたしは、あなたの子孫を空の星のように増し加え、あなたの子孫に、これらの国々をみな与えよう。こうして地のすべての国々は、あなたの子孫によって祝福される。

創 28:4 神はアブラハムの祝福を、おまえと、おまえとともにいるおまえの子孫とに授け、神がアブラハムに下さった地、おまえがいま寄留しているこの地を継がせてくださるように。」

創 32:12 あなたはかつて『わたしは必ずあなたをしあわせにし、あなたの子孫を多くて数えきれない海の砂のようにする』と仰せられました。」

(参考11:30、15:2,3、16:1、17:17、22:12、ローマ4:18~21、ヘブル11:11,12)
創 11:30 サライは不妊の女で、子どもがなかった。

創 15:2 そこでアブラムは申し上げた。「神、主よ。私に何をお与えになるのですか。私には子がありません。私の家の相続人は、あのダマスコのエリエゼルになるのでしょうか。」
15:3 さらに、アブラムは、「ご覧ください。あなたが子孫を私に下さらないので、私の家の奴隷が、私の跡取りになるでしょう」と申し上げた。

創 16:1 アブラムの妻サライは、彼に子どもを産まなかった。彼女にはエジプト人の女奴隷がいて、その名をハガルといった。

創 17:17 アブラハムはひれ伏し、そして笑ったが、心の中で言った。「百歳の者に子どもが生まれようか。サラにしても、九十歳の女が子を産むことができようか。」

創 22:12 御使いは仰せられた。「あなたの手を、その子に下してはならない。その子に何もしてはならない。今、わたしは、あなたが神を恐れることがよくわかった。あなたは、自分の子、自分のひとり子さえ惜しまないでわたしにささげた。」

ロマ 4:18 彼は望みえないときに望みを抱いて信じました。それは、「あなたの子孫はこのようになる」と言われていたとおりに、彼があらゆる国の人々の父となるためでした。
4:19 アブラハムは、およそ百歳になって、自分のからだが死んだも同然であることと、サラの胎の死んでいることとを認めても、その信仰は弱りませんでした。
4:20 彼は、不信仰によって神の約束を疑うようなことをせず、反対に、信仰がますます強くなって、神に栄光を帰し、
4:21 神には約束されたことを成就する力があることを堅く信じました。

ヘブル 11:11 信仰によって、サラも、すでにその年を過ぎた身であるのに、子を宿す力を与えられました。彼女は約束してくださった方を真実な方と考えたからです。
11:12 そこで、ひとりの、しかも死んだも同様のアブラハムから、天の星のように、また海べの数えきれない砂のように数多い子孫が生まれたのです。

3、 第三の約束 - 全世界の祝福

創12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」

創 18:18 アブラハムは必ず大いなる強い国民となり、地のすべての国々は、彼によって祝福される。

創 22:18 あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」

(その試み)

(1)彼は二度、人に不幸を及ぼす原因となる。

創 12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラムはエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。この地のききんは激しかったからである。
12:11 彼はエジプトに近づき、そこに入ろうとするとき、妻のサライに言った。「聞いておくれ。あなたが見目麗しい女だということを私は知っている。
12:12 エジプト人は、あなたを見るようになると、この女は彼の妻だと言って、私を殺すが、あなたは生かしておくだろう。
12:13 どうか、私の妹だと言ってくれ。そうすれば、あなたのおかげで私にも良くしてくれ、あなたのおかげで私は生きのびるだろう。」
・・・・・
創 20:1 アブラハムは、そこからネゲブの地方へ移り、カデシュとシュルの間に住みついた。ゲラルに滞在中、
20:2 アブラハムは、自分の妻サラのことを、「これは私の妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、使いをやって、サラを召し入れた。
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(2)彼はロトと別れなければならなかった。

創 13:1 それで、アブラムは、エジプトを出て、ネゲブに上った。彼と、妻のサライと、すべての所有物と、ロトもいっしょであった。
13:2 アブラムは家畜と銀と金とに非常に富んでいた。
13:3 彼はネゲブから旅を続けて、ベテルまで、すなわち、ベテルとアイの間で、初めに天幕を張った所まで来た。
13:4 そこは彼が以前に築いた祭壇の場所である。その所でアブラムは、【主】の御名によって祈った。
13:5 アブラムといっしょに行ったロトもまた、羊の群れや牛の群れ、天幕を所有していた。
13:6 その地は彼らがいっしょに住むのに十分ではなかった。彼らの持ち物が多すぎたので、彼らがいっしょに住むことができなかったのである。
・・・・・・

(3)外国の諸王との戦い

創 14:1 さて、シヌアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティデアルの時代に、
14:2 これらの王たちは、ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シヌアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラの王、すなわち、ツォアルの王と戦った。
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(4) 彼はアビメレクに抗議しなければならなかった。

創 21:22 そのころ、アビメレクとその将軍ピコルとがアブラハムに告げて言った。「あなたが何をしても、神はあなたとともにおられる。
21:23 それで今、ここで神によって私に誓ってください。私も、私の親類縁者たちをも裏切らないと。そして私があなたに尽くした真実にふさわしく、あなたは私にも、またあなたが滞在しているこの土地にも真実を尽くしてください。」
21:24 するとアブラハムは、「私は誓います」と言った。
21:25 また、アブラハムは、アビメレクのしもべどもが奪い取った井戸のことでアビメレクに抗議した。
21:26 アビメレクは答えた。「だれがそのようなことをしたのか知りませんでした。それにあなたもまた、私に告げなかったし、私もまたきょうまで聞いたことがなかったのです。」
21:27 そこでアブラハムは羊と牛を取って、アビメレクに与え、ふたりは契約を結んだ。
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〔アプラハムの生涯の信憑性〕

1、 歴史的に正確なもので、新約聖書の証言によって実証されています。

マタ1:2 アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、

マタ 8:11 あなたがたに言いますが、たくさんの人が東からも西からも来て、天の御国で、アブラハム、イサク、ヤコブといっしょに食卓に着きます。

マタ 22:32 『わたしは、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあります。神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。」

マル 12:26 それに、死人がよみがえることについては、モーセの書にある柴の個所で、神がモーセにどう語られたか、あなたがたは読んだことがないのですか。『わたしは、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあります。

ルカ 3:34 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子、

ルカ 13:28 神の国にアブラハムやイサクやヤコブや、すべての預言者たちが入っているのに、あなたがたは外に投げ出されることになったとき、そこで泣き叫んだり、歯ぎしりしたりするのです。

ルカ 16:21 金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたいと思っていた。犬もやって来ては、彼のおできをなめていた。
16:22 さて、この貧しい人は死んで、御使いたちによってアブラハムのふところに連れて行かれた。金持ちも死んで葬られた。
16:23 その金持ちは、ハデスで苦しみながら目を上げると、アブラハムが、はるかかなたに見えた。しかも、そのふところにラザロが見えた。
16:24 彼は叫んで言った。『父アブラハムさま。私をあわれんでください。ラザロが指先を水に浸して私の舌を冷やすように、ラザロをよこしてください。私はこの炎の中で、苦しくてたまりません。』
・・・・・
ルカ 20:37 それに、死人がよみがえることについては、モーセも柴の個所で、主を、『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んで、このことを示しました。

ヨハ 8:37 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っています。しかしあなたがたはわたしを殺そうとしています。わたしのことばが、あなたがたのうちに入っていないからです。

ヨハ 8:39 彼らは答えて言った。「私たちの父はアブラハムです。」イエスは彼らに言われた。「あなたがたがアブラハムの子どもなら、アブラハムのわざを行いなさい。
8:40 ところが今あなたがたは、神から聞いた真理をあなたがたに話しているこのわたしを、殺そうとしています。アブラハムはそのようなことはしなかったのです。

ヨハ 8:52 ユダヤ人たちはイエスに言った。「あなたが悪霊につかれていることが、今こそわかりました。アブラハムは死に、預言者たちも死にました。しかし、あなたは、『だれでもわたしのことばを守るならば、その人は決して死を味わうことがない』と言うのです。
8:53 あなたは、私たちの父アブラハムよりも偉大なのですか。そのアブラハムは死んだのです。預言者たちもまた死にました。あなたは、自分自身をだれだと言うのですか。」

ヨハ 8:56 あなたがたの父アブラハムは、わたしの日を見ることを思って大いに喜びました。彼はそれを見て、喜んだのです。」
8:57 そこで、ユダヤ人たちはイエスに向かって言った。「あなたはまだ五十歳になっていないのにアブラハムを見たのですか。」
8:58 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。アブラハムが生まれる前から、わたしはいるのです。」

使 3:13 アブラハム、イサク、ヤコブの神、すなわち、私たちの父祖たちの神は、そのしもべイエスに栄光をお与えになりました。あなたがたは、この方を引き渡し、ピラトが釈放すると決めたのに、その面前でこの方を拒みました。

使 3:25 あなたがたは預言者たちの子孫です。また、神がアブラハムに、『あなたの子孫によって、地の諸民族はみな祝福を受ける』と言って、あなたがたの父祖たちと結ばれたあの契約の子孫です。

使 7:2 そこでステパノは言った。「兄弟たち、父たちよ。聞いてください。私たちの父アブラハムが、ハランに住む以前まだメソポタミヤにいたとき、栄光の神が彼に現れて、
7:3 『あなたの土地とあなたの親族を離れ、わたしがあなたに示す地に行け』と言われました。

ロマ 4:1 それでは、肉による私たちの父祖アブラハムの場合は、どうでしょうか。
4:2 もしアブラハムが行いによって義と認められたのなら、彼は誇ることができます。しかし、神の御前では、そうではありません。
4:3 聖書は何と言っていますか。「それでアブラハムは神を信じた。それが彼の義とみなされた」とあります。

Ⅱコリ 11:22 彼らはヘブル人ですか。私もそうです。彼らはイスラエル人ですか。私もそうです。彼らはアブラハムの子孫ですか。私もそうです。

ガラ 3:6 アブラハムは神を信じ、それが彼の義とみなされました。それと同じことです。
3:7 ですから、信仰による人々こそアブラハムの子孫だと知りなさい。
3:8 聖書は、神が異邦人をその信仰によって義と認めてくださることを、前から知っていたので、アブラハムに対し、「あなたによってすべての国民が祝福される」と前もって福音を告げたのです。

ヘブル 2:16 主は御使いたちを助けるのではなく、確かに、アブラハムの子孫を助けてくださるのです。

ヘブル 6:13 神は、アブラハムに約束されるとき、ご自分よりすぐれたものをさして誓うことがありえないため、ご自分をさして誓い、

ヘブル 7:1 このメルキゼデクは、サレムの王で、すぐれて高い神の祭司でしたが、アブラハムが王たちを打ち破って帰るのを出迎えて祝福しました。
7:2 またアブラハムは彼に、すべての戦利品の十分の一を分けました。まず彼は、その名を訳すと義の王であり、次に、サレムの王、すなわち平和の王です。

ヘブル 11:8 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。

ヘブル 11:12 そこで、ひとりの、しかも死んだも同様のアブラハムから、天の星のように、また海べの数えきれない砂のように数多い子孫が生まれたのです。

ヘブル 11:17 信仰によって、アブラハムは、試みられたときイサクをささげました。彼は約束を与えられていましたが、自分のただひとりの子をささげたのです。

ヤコブ 2:21 私たちの父アブラハムは、その子イサクを祭壇にささげたとき、行いによって義と認められたではありませんか。
2:22 あなたの見ているとおり、彼の信仰は彼の行いとともに働いたのであり、信仰は行いによって全うされ、
2:23 そして、「アブラハムは神を信じ、その信仰が彼の義とみなされた」という聖書のことばが実現し、彼は神の友と呼ばれたのです。

Ⅰペテ 3:6 たとえばサラも、アブラハムを主と呼んで彼に従いました。あなたがたも、どんなことをも恐れないで善を行えば、サラの子となるのです。

2、ある批評家は、文字を書く技術はBC二千年期までは知られていなかったと主張して来ましたし、ヴェルハウゼンやグラーフの考えでは、イスラエルは王国時代以前(すなわち、サウル王やダビデ王以前)には成文書はなかったと言っていますが、1929年ラス・シャムラから発見された文書(BC15世紀から14世紀初頭のもの)により、文字を書くことがBC二千年期の中頃(アブラハムの時代)にはカナン人に知られていたことが証明されました。

3、1935年、ユーフラテス河畔のマリ(テル・ハリリ)で二万枚以上の粘土板文書が発見されたが、そのほとんどが、BC二千年期の初めに属するものでした。これらの文書は、イスラエルの先祖達がカラン(ハラン)地方から来たという聖書の記録を立証しています。ナホルの町(創世記24:10)は、この文書ではナクルとなっています。ハムラビの時代(BC18世紀)には、この町はアモリ人の王の支配下にあったようです。セルグ(11:22,23)とテラ(11:24~32)もカラン近辺の町の名として使われています。
創 11:22 セルグは三十年生きて、ナホルを生んだ。
11:23 セルグはナホルを生んで後、二百年生き、息子、娘たちを生んだ。
11:24 ナホルは二十九年生きて、テラを生んだ。
11:25 ナホルはテラを生んで後、百十九年生き、息子、娘たちを生んだ。
11:26 テラは七十年生きて、アブラムとナホルとハランを生んだ。

4、創世記13章10節は、考古学者グリュックによると、「ヨルダン渓谷は常に居住地であり、古代パレスチナの最も肥沃な地方の一つであった。」と言われていて、正確です。
創 13:10 ロトが目を上げてヨルダンの低地全体を見渡すと、【主】がソドムとゴモラを滅ぼされる以前であったので、その地はツォアルのほうに至るまで、【主】の園のように、またエジプトの地のように、どこもよく潤っていた。

5、創世記一四章のエラムの王ケドルラオメルたちの連合軍の侵略について、グリュックは「考古学的事実は聖書の記述と全く一致する。BC1900年頃、徹底的な破壊がこの地方で行なわれた。我々の調査した限りでは、彼らの文明は二度と再興することはなかった。その受けた打撃は実にひどく、全壊してしまった。」と記しています。
また318人(14:14)という数も正確であると指摘しています。
創 14:1 さて、シヌアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティデアルの時代に、
14:2 これらの王たちは、ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シヌアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラの王、すなわち、ツォアルの王と戦った。

創 14:14 アブラムは自分の親類の者がとりこになったことを聞き、彼の家で生まれたしもべども318人を召集して、ダンまで追跡した。

6、創世記14章6節のホリ人はフリ人のことであって、BC二千年期に最も偉大な役割を果たした民族であることが知られています。
創 14:6 セイルの山地でホリ人を打ち破り、砂漠の近くのエル・パランまで進んだ。
フリ人の中心地は現代のキルククの西南約12マイルのヌズ(ヨルダン・テパ)でした。ここで発見された粘土版文書(1925~1931年発掘)は創世記の背景を説明するのに大きな光を与えてきました。
たとえば、

(1) 子のない者が男子を養子とするのはヌズの習慣であったこと。養子は養父母に仕え、彼らを葬り、その代わりに、養父母の相続人となった。けれども万一、養父母に男子が生まれた場合は、養子はその権利を実子にゆずらなければならなかった。(創世記15:1~4)
創 15:1 これらの出来事の後、【主】のことばが幻のうちにアブラムに臨み、こう仰せられた。「アブラムよ。恐れるな。わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは非常に大きい。」
15:2 そこでアブラムは申し上げた。「神、主よ。私に何をお与えになるのですか。私には子がありません。私の家の相続人は、あのダマスコのエリエゼルになるのでしょうか。」
15:3 さらに、アブラムは、「ご覧ください。あなたが子孫を私に下さらないので、私の家の奴隷が、私の跡取りになるでしょう」と申し上げた。
15:4 すると、【主】のことばが彼に臨み、こう仰せられた。「その者があなたの跡を継いではならない。ただ、あなた自身から生まれ出て来る者が、あなたの跡を継がなければならない。」

(2) 妻が子を生まなかった場合、彼女は仕女を夫に与え、その夫のために子を生ませることができた。(創世記16:2)
創16:2 サライはアブラムに言った。「ご存じのように、【主】は私が子どもを産めないようにしておられます。どうぞ、私の女奴隷のところにお入りください。たぶん彼女によって、私は子どもの母になれるでしょう。」アブラムはサライの言うことを聞き入れた。

(3) 仕女が子を生んだ場合、正妻が仕女を追い出すことは禁じられていた。それで、アブラハムは妻サラが仕女ハガルを追い出そうとしたのを恐れたのです。(創世記21:10~12)
創 21:10 それでアブラハムに言った。「このはしためを、その子といっしょに追い出してください。このはしための子は、私の子イサクといっしょに跡取りになるべきではありません。」
21:11 このことは、自分の子に関することなので、アブラハムは、非常に悩んだ。
21:12 すると、神はアブラハムに仰せられた。「その少年と、あなたのはしためのことで、悩んではならない。サラがあなたに言うことはみな、言うとおりに聞き入れなさい。イサクから出る者が、あなたの子孫と呼ばれるからだ。

7、考古学の研究によって、ソドムとゴモラのあった地方での人間の居住は、大体二千年期の初め頃に終っています。これはアブラハムの時代に、この平野の町々が滅亡した聖書の記録と一致しています。

12章

創世記12章の中心はなんといってもアブラハムの召命です。ここから神の取り扱いが第二の段階、すなわち、神の選民としてのユダヤ人を中心とした取り扱いに変わっていきます。創世記では、12章から50章までは、ヘブル民族の始まりとその歴史の初頭の部分を記しており、アブラハムからその子孫のヤコブの家族がエジプトに移住するまでを扱っています。

ここで、聖書全体からの神のお取り扱いを見ておきましょう。

創世記1章~11章‥神は全人類を取り扱っておられます。
創世記12章~使徒2章‥神は選民としてのユダヤ人を取り扱っておられます。
使徒2章のペンテコステ以後‥神は再び全人類を取り扱っておられます。

12章の概要を記してみますと、

1~3節 神の語りかけ

①分離の命令 「あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、」
② 祝福の約束

4~6節 アブラムの移動

12:5 アブラムは妻のサライと、おいのロトと、彼らが得たすべての財産と、ハランで加えられた人々を伴い、カナンの地に行こうとして出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。
12:6 アブラムはその地を通って行き、シェケムの場、モレの樫の木のところまで来た。当時、その地にはカナン人がいた。

(1) 動機(4節)‥‥神のことばに従って(ヘブル11:8)
ヘブル 11:8 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。

(2)同伴者(5節)‥‥妻サライ、おいのロト、すべての財産(ほとんどが家畜)、カランで加えられた人々
12:5 アブラムは妻のサライと、おいのロトと、彼らが得たすべての財産と、ハランで加えられた人々を伴い、カナンの地に行こうとして出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。

(3) 年令75才(4節)
創 12:4 アブラムは【主】がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった。

(4) 移動先(5節)‥‥カナンの地

7~8節 アブラムの築壇

(1)7節‥‥神の顕現に接したとき
創 12:7 そのころ、【主】がアブラムに現れ、そして「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える」と仰せられた。アブラムは自分に現れてくださった【主】のために、そこに祭壇を築いた。

(2)8節‥‥主の名によって祈ったとき
創 12:8 彼はそこからベテルの東にある山のほうに移動して天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。彼は【主】のため、そこに祭壇を築き、【主】の御名によって祈った。

(3)13:18‥‥ヘブロンのマムレの樫の木のそばに住み始めたとき
創 13:18 そこで、アブラムは天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のそばに来て住んだ。そして、そこに【主】のための祭壇を築いた。

9~20節 エジプト行

 

(1) 理由(10節)‥‥ききんが激しかったから。
創 12:9 それから、アブラムはなおも進んで、ネゲブのほうへと旅を続けた。
12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラムはエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。この地のききんは激しかったからである。

(2)失敗(11~16節)‥‥アブラムの家庭が崩懐に直面する。
12:11 彼はエジプトに近づき、そこに入ろうとするとき、妻のサライに言った。「聞いておくれ。あなたが見目麗しい女だということを私は知っている。
12:12 エジプト人は、あなたを見るようになると、この女は彼の妻だと言って、私を殺すが、あなたは生かしておくだろう。
12:13 どうか、私の妹だと言ってくれ。そうすれば、あなたのおかげで私にも良くしてくれ、あなたのおかげで私は生きのびるだろう。」
12:14 アブラムがエジプトに入って行くと、エジプト人は、その女が非常に美しいのを見た。
12:15 パロの高官たちが彼女を見て、パロに彼女を推賞したので、彼女はパロの宮廷に召し入れられた。
12:16 パロは彼女のために、アブラムによくしてやり、それでアブラムは羊の群れ、牛の群れ、ろば、それに男女の奴隷、雌ろば、らくだを所有するようになった。

(3)神の干渉(17~19節)‥‥「しかし、主はアブラムの妻サライのことで、パロと、その家をひどい災害で痛めつけた。」
12:17 しかし、【主】はアブラムの妻サライのことで、パロと、その家をひどい災害で痛めつけた。
12:18 そこでパロはアブラムを呼び寄せて言った。「あなたは私にいったい何ということをしたのか。なぜ彼女があなたの妻であることを、告げなかったのか。
12:19 なぜ彼女があなたの妹だと言ったのか。だから、私は彼女を私の妻として召し入れていた。しかし、さあ今、あなたの妻を連れて行きなさい。」
(このほかに神が干渉された例、創世記22:11、出エジプト記14:15,26、民数記14:10)

(4)エジプトからの帰還(12:20、13:1)
創 12:20 パロはアブラムについて部下に命じた。彼らは彼を、彼の妻と、彼のすべての所有物とともに送り出した。

創 13:1 それで、アブラムは、エジプトを出て、ネゲブに上った。彼と、妻のサライと、すべての所有物と、ロトもいっしょであった。

〔創世記中、神の完全な恵みを表わす 7人の代表的人物〕

(ヘブル11:1~22)
ヘブル 11:1 信仰は望んでいる事がらを保証し、目に見えないものを確信させるものです。
11:2 昔の人々はこの信仰によって称賛されました。
11:3 信仰によって、私たちは、この世界が神のことばで造られたことを悟り、したがって、見えるものが目に見えるものからできたのではないことを悟るのです。
① アベルは罪の自覚

11:4 信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたいけにえを神にささげ、そのいけにえによって彼が義人であることの証明を得ました。神が、彼のささげ物を良いささげ物だとあかししてくださったからです。彼は死にましたが、その信仰によって、今もなお語っています。

② エノクは神との交わり

11:5 信仰によって、エノクは死を見ることのないように移されました。神に移されて、見えなくなりました。移される前に、彼は神に喜ばれていることが、あかしされていました。
11:6 信仰がなくては、神に喜ばれることはできません。神に近づく者は、神がおられることと、神を求める者には報いてくださる方であることとを、信じなければならないのです。

③ ノアは回心

11:7 信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました。

④ アブラハムは信仰

11:8 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。
11:9 信仰によって、彼は約束された地に他国人のようにして住み、同じ約束をともに相続するイサクやヤコブとともに天幕生活をしました。
11:10 彼は、堅い基礎の上に建てられた都を待ち望んでいたからです。その都を設計し建設されたのは神です。
11:11 信仰によって、サラも、すでにその年を過ぎた身であるのに、子を宿す力を与えられました。彼女は約束してくださった方を真実な方と考えたからです。
11:12 そこで、ひとりの、しかも死んだも同様のアブラハムから、天の星のように、また海べの数えきれない砂のように数多い子孫が生まれたのです。
11:13 これらの人々はみな、信仰の人々として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるかにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり寄留者であることを告白していたのです。
11:14 彼らはこのように言うことによって、自分の故郷を求めていることを示しています。
11:15 もし、出て来た故郷のことを思っていたのであれば、帰る機会はあったでしょう。
11:16 しかし、事実、彼らは、さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。それゆえ、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいませんでした。事実、神は彼らのために都を用意しておられました。
11:17 信仰によって、アブラハムは、試みられたときイサクをささげました。彼は約束を与えられていましたが、自分のただひとりの子をささげたのです。
11:18 神はアブラハムに対して、「イサクから出る者があなたの子孫と呼ばれる」と言われたのですが、
11:19 彼は、神には人を死者の中からよみがえらせることもできる、と考えました。それで彼は、死者の中からイサクを取り戻したのです。これは型です。

⑤ イサクは神の子となること

11:20 信仰によって、イサクは未来のことについて、ヤコブとエサウを祝福しました。

⑥ ヤコブは奉仕

11:21 信仰によって、ヤコブは死ぬとき、ヨセフの子どもたちをひとりひとり祝福し、また自分の杖のかしらに寄りかかって礼拝しました。

⑦ ヨセフは苦しみと栄光

11:22 信仰によって、ヨセフは臨終のとき、イスラエルの子孫の脱出を語り、自分の骨について指図しました。

これらの人物をとおして神の御霊が働いているのを見ることができます。

(アブラハムは信仰の模範)

1、「信仰による人々こそアブラハムの子孫だと知りなさい。」 (ガラテヤ3:7)

2、神がアブラハムに対して、彼の子孫が空の星のように、海辺の砂のようになると言われたのは(創世記15:5、22:17)、彼の信仰にならう霊的子孫を差しています。

創 15:5 そして、彼を外に連れ出して仰せられた。「さあ、天を見上げなさい。星を数えることができるなら、それを数えなさい。」さらに仰せられた。「あなたの子孫はこのようになる。」
創 22:17 わたしは確かにあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を、空の星、海辺の砂のように数多く増し加えよう。そしてあなたの子孫は、その敵の門を勝ち取るであろう。

3、「彼は主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。」(創世記15:6)このみことばは聖書中7回記されています。ほかに、ローマ4:3,9, 22,23、ガラテヤ3:6、ヤコブ2:23

ロマ 4:3 聖書は何と言っていますか。「それでアブラハムは神を信じた。それが彼の義とみなされた」とあります。
ロマ 4:9 それでは、この幸いは、割礼のある者にだけ与えられるのでしょうか。それとも、割礼のない者にも与えられるのでしょうか。私たちは、「アブラハムには、その信仰が義とみなされた」と言っていますが、

ロマ 4:22 だからこそ、それが彼の義とみなされたのです。
4:23 しかし、「彼の義とみなされた」と書いてあるのは、ただ彼のためだけでなく、

ガラ 3:6 アブラハムは神を信じ、それが彼の義とみなされました。それと同じことです。

ヤコブ 2:23 そして、「アブラハムは神を信じ、その信仰が彼の義とみなされた」という聖書のことばが実現し、彼は神の友と呼ばれたのです。

〔アプラハムの召命〕

1、 彼の父テラは、偶像礼拝者であった(ヨシュア記24:2)。
ヨシ 24:2 ヨシュアはすべての民に言った。「イスラエルの神、【主】はこう仰せられる。『あなたがたの先祖たち、アブラハムの父で、ナホルの父でもあるテラは、昔、ユーフラテス川の向こうに住んでおり、ほかの神々に仕えていた。

アブラハムはそれに対して、メシヤ出現のための新種族を造り出すために、その国、その族、その家、その友を離れ去るように導かれた。

彼の召命においては、二つの過程があった。

第一は、ウルを去って、カランに留まった時(創世記11:29~32、使徒7:2~4)
創 11:29 アブラムとナホルは妻をめとった。アブラムの妻の名はサライであった。ナホルの妻の名はミルカといって、ハランの娘であった。ハランはミルカの父で、またイスカの父であった。
11:30 サライは不妊の女で、子どもがなかった。
11:31 テラは、その息子アブラムと、ハランの子で自分の孫のロトと、息子のアブラムの妻である嫁のサライとを伴い、彼らはカナンの地に行くために、カルデヤ人のウルからいっしょに出かけた。しかし、彼らはハランまで来て、そこに住みついた。
11:32 テラの一生は二百五年であった。テラはハランで死んだ。

使 7:2 そこでステパノは言った。「兄弟たち、父たちよ。聞いてください。私たちの父アブラハムが、ハランに住む以前まだメソポタミヤにいたとき、栄光の神が彼に現れて、
7:3 『あなたの土地とあなたの親族を離れ、わたしがあなたに示す地に行け』と言われました。
7:4 そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、ハランに住みました。そして、父の死後、神は彼をそこから今あなたがたの住んでいるこの地にお移しになりましたが、

第二は、カランを出発して、カナンに行った時(創世記12:1~6)
創 12:1 【主】はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。
12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。
12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」
12:4 アブラムは【主】がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった。
12:5 アブラムは妻のサライと、おいのロトと、彼らが得たすべての財産と、ハランで加えられた人々を伴い、カナンの地に行こうとして出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。
12:6 アブラムはその地を通って行き、シェケムの場、モレの樫の木のところまで来た。当時、その地にはカナン人がいた。

彼がウルを出た時は60才くらいであったと思われます。カランを出発した時は75才でした。彼は行く所を知らずに、ただ神の命令に従って出発しました。しかし栄光の神は、彼を導かれたのです(ヘブル11:8)。
11:8 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。

2、 アブラハムは神の命令と約束を受けました。
神の命令は、「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。」でした。
真の信仰は、肉につける保護、愛情、愛着などから離れることによって始まります。
肉の絆を断ち切れない者は、再び妥協するようになります。救われた時に、こういうものから離れて、神に従うかどうかがその人の信仰生涯を決めるのです。「出」なければ、神が示す地に行くことができません。神の祝福を受けることもできません。だから神は、「出る」ことを命じられたのです。
イエス・キリストは「恵みとまことに満ちておられました。」(ヨハネ1:14)
主イエスはまこと(真理)によって命令され、恵みによって祝福の約束を与えられたのです。たとえば、マタイの福音書11章28節では、
命令 「わたしのところに来なさい。」
約束 「わたしがあなたがたを休ませてあげます。」
マタ 11:28 すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。

3、 アブラハムに与えられた七つの約束

①大いなる国民となること
②大いなる祝福を受けること
③大いなる名とされること
④彼の名が他に祝福をもたらすこと
⑤彼を祝福する者は祝福されること
⑥彼をのろう者はのろわれること
⑦ 地上のすべての民族が彼によって祝福されること

神はアブラムを忠実な者とごらんになり、彼を召し出し、このような驚くべき約束を与えられました。(ネヘミヤ記9:6~8)
ネヘ 9:6 「ただ、あなただけが【主】です。あなたは天と、天の天と、その万象、地とその上のすべてのもの、海とその中のすべてのものを造り、そのすべてを生かしておられます。そして、天の軍勢はあなたを伏し拝んでおります。
9:7 あなたこそ神である【主】です。あなたはアブラムを選んでカルデヤ人のウルから連れ出し、彼にアブラハムという名を与えられました。
9:8 あなたは、彼の心が御前に真実であるのを見て、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、エブス人、ギルガシ人の地を、彼と彼の子孫に与えるとの契約を彼と結び、あなたの約束を果たされました。あなたは正しい方だからです。

〔アプラハムの従順〕

アブラムは神の命令に従って

1、 彼の生まれ故郷(国)、カルデヤのウルから出て(11:31)、
創 11:31 テラは、その息子アブラムと、ハランの子で自分の孫のロトと、息子のアブラムの妻である嫁のサライとを伴い、彼らはカナンの地に行くために、カルデヤ人のウルからいっしょに出かけた。しかし、彼らはハランまで来て、そこに住みついた。

2、 父の家を出て(12:4,5)、
創 12:4 アブラムは【主】がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった。
12:5 アブラムは妻のサライと、おいのロトと、彼らが得たすべての財産と、ハランで加えられた人々を伴い、カナンの地に行こうとして出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。

3、親族(ロト)とも別れた(13:11)。
創 13:11 それで、ロトはそのヨルダンの低地全体を選び取り、その後、東のほうに移動した。こうして彼らは互いに別れた。

アブラムは自分の国力ルデヤのウルから出ましたが、父テラのためにしばらくの間カランに留まっていました。これはクリスチャンが「古い人」(ローマ6:6)の死ぬまで、約束の祝福を受けることができないことを示しています。彼は、父テラが死ぬと、父の家を出てカナンに向かいました。クリスチャンが信仰の勝利を得、神の約束を獲得するためには、必ず、古い人とそれに属するすべてのものから離れなければならないのです。

ロマ 6:6 私たちの古い人がキリストとともに十字架につけられたのは、罪のからだが滅びて、私たちがもはやこれからは罪の奴隷でなくなるためであることを、私たちは知っています。

〔アブラハムの従順の結果〕

アブラムは従順の結果として安全にカナンに到着しました。そしてそこで神はアブラムに顕現されたのです(12:7)。これは彼の信仰の従順に対する神の報賞です。
創 12:7 そのころ、【主】がアブラムに現れ、そして「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える」と仰せられた。アブラムは自分に現れてくださった【主】のために、そこに祭壇を築いた。

ここで注目したいことがあります。
12章1節で、「わたしが示す地へ行きなさい。」といわれていたのが、
12章7節では、「わたしはこの地を与える。」と明確な約束の保証が与えられたこと。
これに答えて、アブラムは主のために祭壇を築き、天幕を張りました(12:7,8)。

創 12:8 彼はそこからベテルの東にある山のほうに移動して天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。彼は【主】のため、そこに祭壇を築き、【主】の御名によって祈った。

祭壇と天幕は彼の生涯の特長です。
祭壇は、彼の奉仕の生涯を表わし、
天幕は、彼の旅人としての生涯を示しています(ヘブル11:9,13)。
ヘブル 11:9 信仰によって、彼は約束された地に他国人のようにして住み、同じ約束をともに相続するイサクやヤコブとともに天幕生活をしました。
ヘブル 11:13 これらの人々はみな、信仰の人々として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるかにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり寄留者であることを告白していたのです。

彼が約束の地にあってもなお旅人の生涯を送った理由は、神が設計し、建設された都を望んでいたからです(ヘブル11:10)。
ヘブル 11:10 彼は、堅い基礎の上に建てられた都を待ち望んでいたからです。その都を設計し建設されたのは神です。

このように日に見えない天の御国を望む生涯が信仰の生涯です。私たちもまた、地上にあっては旅人であることを覚えましょう。

〔信仰の試練〕

アブラムはカナンの地に入るや否や、二つの敵に出合いました。

1、 カナン人(12:6)
創 12:6 アブラムはその地を通って行き、シェケムの場、モレの樫の木のところまで来た。当時、その地にはカナン人がいた。

2、 ききん(12:10)
創 12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラムはエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。この地のききんは激しかったからである。

神は信仰を試みるために、しばしばこの二つの敵を利用されました。
イスラエルの民がエジプトを脱出してレフィディムに来た時、水がなくて苦しみ、その上アマレク人が来て戦いました(出エジプト記17章)。
ヨシャパテの時代にも、水がなく、モアブ人がいました(列王記第2、3章)。
イエス・キリストの試みの時にも(マタイ4:1,2)「飢え」と「悪魔」がいました。
マタ 4:1 さて、イエスは、悪魔の試みを受けるため、御霊に導かれて荒野に上って行かれた。
4:2 そして、四十日四十夜断食したあとで、空腹を覚えられた。

信仰の生涯にも、これと同じような試練があります。喜びがなく、満足がない状態の時に、サタンの攻撃がくるのです。当時、アブラムはまだ信仰生活に練達していなかったために、失敗してしまいました。
彼は、ききんのために神の約束の地を去って、エジプトに下りましたが、そこでは神は彼に顕われず、彼も祭壇を築きませんでした。
エジプトにおいて彼の財産は非常に増えたけれども、霊的生活では何の得るところもなかったのです。神の顕現がなく、霊的奉仕のない生活はわざわいです。彼は、エジプトでサライに罪を犯させようとしました。しかし神はサライの胎に約束の子を与えようと定めておられた故に、サライを助けられました。けれどもこれは、悲しむべきことでした。
「エジプト」という名は、「行きづまる」という意味です。約束の地力ナンを捨てて、この世のエジプトに下ったりして、信仰生活に行き詰まることのないようにしなければなりません。主イエスが荒野での試みの時、サタンを撃退されたように、私たちも敢然と拒絶しなければなりません。

上の写真は、アメリカのthe Providence Lithograph Companyにより1906年に出版されたバイブル・カードより「The Camp of Abraham(アブラハムの天幕生活)」

あとがき

梅雨の時期になりましたが、読者の皆様はいかがお過しですか。多くの方がお葉書などで感想やお励ましを下さり、感謝致しております。最近は見本誌をご希望になる方も増えています。皆様のお近くにも見本誌をご希望になる方がいらっしゃいましたらお知らせ下さい。お送り致します。
私は朝から夜まで、休みなく働きずくめという日がかなりありますが、そういう時にでもひと時、聖書を学ぶと、心は喜び、充実感と満足感にひたります。「みことばを味わうとはコレだなあ!」としみじみと思います。
私はこれまで、聖書のことばを信じて長い間忍耐のいる伝道を続けてきました。ある者は私に力がないと言って去りました。私に力がないのは本当です。しかし私は神のみことばを掘り下げることに夢中になってきました。
しかも片寄った学びにならずに、できる限り健全であろうと努めてきました。そしてみことばは真実です。そこには華かさはありませんが、確かな結実があります。(ヨハネ15:7)
ヨハ 15:7 あなたがたがわたしにとどまり、わたしのことばがあなたがたにとどまるなら、何でもあなたがたのほしいものを求めなさい。そうすれば、あなたがたのためにそれがかなえられます。
(1985.7.1)