聖書の探求(016b) 創世記13章 ロトとの訣別

アブラハムの信仰はすべての面から試みられました。彼は、信仰の新しい段階に進む毎に、新しい問題に直面し、それに勝つと神はさらに新しい祝福を与えられたのです。アブラハムの生涯にはこれがはっきりと見られます。私たちもベターの状態に留まらずに、ベストの恵みに向かって進まなければなりません。

さて、13章には、おいのロトとの訣別が記されています。まず、その概要を考えてみましょう。

1~7節 訣別の理由

6、7節、各々の持ち物(羊や牛の群れ)が多すぎたために、アブラムの牧者たちと、 ロトの牧者たちとの間に争いが起きました。

(ロトの生涯の失敗の原因)

1、 ロトは自ら神とともに歩まず、ただアブラムのあとについて歩んだだけです(12:4、13:1,5)。

創 12:4 アブラムは【主】がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった。
創 13:1 それで、アブラムは、エジプトを出て、ネゲブに上った。彼と、妻のサライと、すべての所有物と、ロトもいっしょであった。
創 13:5 アブラムといっしょに行ったロトもまた、羊の群れや牛の群れ、天幕を所有していた。
表面は同じような生活をしていても、内的に神のみ声に従って歩んでいるのか、それともただ人のあとについて真似ているのかによって全く違った結論に行き着くことになります。人に頼り、人に真似て歩む者は、必ず失敗します。

2、 ロトは、神の幻を見ず、ただ物質的な財産だけに心がとらわれていたのです。

しかしアプラムはしばしば神の顕現に会い、心霊的な幻を見ていました。これはへブル11章に記されている信仰の秘訣です(ヘブル1:10,14,16,20,27,35)。
ヘブル 11:10 彼は、堅い基礎の上に建てられた都を待ち望んでいたからです。その都を設計し建設されたのは神です。
ヘブル 11:14 彼らはこのように言うことによって、自分の故郷を求めていることを示しています。
11:16 しかし、事実、彼らは、さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。それゆえ、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいませんでした。事実、神は彼らのために都を用意しておられました。
ヘブル 11:20 信仰によって、イサクは未来のことについて、ヤコブとエサウを祝福しました。
ヘブル 11:27 信仰によって、彼は、王の怒りを恐れないで、エジプトを立ち去りました。目に見えない方を見るようにして、忍び通したからです。
ヘブル 11:35 女たちは、死んだ者をよみがえらせていただきました。またほかの人たちは、さらにすぐれたよみがえりを得るために、釈放されることを願わないで拷問を受けました。

3、 ロトは、奉仕のために神の召命を受けたことがありません。

クリスチャンは伝道のための使命を受けていなければなりません。この使命に従って働く者は、堅く立つことができます。しかし多くの人々は真似をしますが、試みられる時に失敗するのです。アブラムは召命を信じる信仰に錨をおろしていました。

4、 ロトはアブラムの失敗の誘因となったと思われます。

おそらく、12章でアブラムがエジプトに下ったのは、ロトの勧めによったものと思われます。自分の不信仰のために、信仰の人を誤まらせることがあります。

5、 ロトの財産は彼自身の失敗の原因となりました(テモテ第一6:9,10)。

Ⅰテモ 6:9 金持ちになりたがる人たちは、誘惑とわなと、また人を滅びと破滅に投げ入れる、愚かで、有害な多くの欲とに陥ります。
6:10 金銭を愛することが、あらゆる悪の根だからです。ある人たちは、金を追い求めたために、信仰から迷い出て、非常な苦痛をもって自分を刺し通しました。
財産を持つことは罪ではありません。しかし堅固な信仰のない者には、しばしば財産が失敗の原因になりやすいのです。

7、ロトはソドムの罪を憂えたけれども、欲のためにそこを離れようとはしませんでした(ペテロ第二2:6~8)。

Ⅱペテ 2:6 また、ソドムとゴモラの町を破滅に定めて灰にし、以後の不敬虔な者へのみせしめとされました。
2:7 また、無節操な者たちの好色なふるまいによって悩まされていた義人ロトを救い出されました。
2:8 というのは、この義人は、彼らの間に住んでいましたが、不法な行いを見聞きして、日々その正しい心を痛めていたからです。

8~13節 訣別の様子

創 13:8 そこで、アブラムはロトに言った。「どうか私とあなたとの間、また私の牧者たちとあなたの牧者たちとの間に、争いがないようにしてくれ。私たちは、親類同士なのだから。
13:9 全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。もしあなたが左に行けば、私は右に行こう。もしあなたが右に行けば、私は左に行こう。」
13:10 ロトが目を上げてヨルダンの低地全体を見渡すと、【主】がソドムとゴモラを滅ぼされる以前であったので、その地はツォアルのほうに至るまで、【主】の園のように、またエジプトの地のように、どこもよく潤っていた。
13:11 それで、ロトはそのヨルダンの低地全体を選び取り、その後、東のほうに移動した。こうして彼らは互いに別れた。
13:12 アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住んで、ソドムの近くまで天幕を張った。
13:13 ところが、ソドムの人々はよこしまな者で、【主】に対しては非常な罪人であった。

1、8~9節には、アブラムのすばらしい提案がされています。これほどの主への信頼と謙遜を私たちも持ちたいものです。

2、10~13節は、ロトの選択の要約です。ソドムの様子は18章に記されています。ロトは霊魂のことを考えず、目に見える物質的なことによってソドムを選びました。その結果が19章です。

14~18節 訣別後の有様

1、14~17節 神の顕現

創 13:14 ロトがアブラムと別れて後、【主】はアブラムに仰せられた。「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。
13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。
13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。
13:17 立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。」
離れなければならない時に離れると、神は顕現してくださいます。神はみことばをもって語られました。そのみことばとは、
14節「目を上げて‥‥見渡しなさい。」
10節では、ロトは自分自身の選択のために目を上げて見渡しました。しかしアブラムは神が選んでくださった場所を見るために目を上げて見渡したのです。彼は問題の決定権を神にゆだねていたのです。
15節「あなたが見渡しているこの地全部を‥‥あなたとあなたの子孫とに与えよう。」
16節「あなたの子孫を地のちりのようにならせる。」
17節「その地を縦と横に歩き回りなさい。‥‥その地を与えるのだから。」歩き回ることは信仰の行ないを意味しています。

2、18節 アブラムの祭壇

13:18 そこで、アブラムは天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のそばに来て住んだ。そして、そこに【主】のための祭壇を築いた。
神との交わりの継続を表わしています。

〔アプラムの回復の秘訣と結果〕

アブラムはエジプトに下って行って失敗しましたけれども、カナンの地に帰ってくるや否や、信仰を回復しました。その秘訣と結果は、

1、 アブラムはエジプトから帰ると、彼が最初に築いた祭壇の場所に来て、主の御名によって祈り、礼拝しました(13:4)。

創13:4 そこは彼が以前に築いた祭壇の場所である。その所でアブラムは、【主】の御名によって祈った。 ロトはこの礼拝に加わらなかったようです。

2、 アブラムは争いを好みませんでした(13:8)。

創 13:8 そこで、アブラムはロトに言った。「どうか私とあなたとの間、また私の牧者たちとあなたの牧者たちとの間に、争いがないようにしてくれ。私たちは、親類同士なのだから。
争いの原因は財産である羊の群でしたが、彼は自分の権利を捨てて、平和を選びました。

3、アブラムは選択の優先権を持っていたけれども、その特権をおいのロトに譲りました(13:9)。

創 13:9 全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。もしあなたが左に行けば、私は右に行こう。もしあなたが右に行けば、私は左に行こう。」

4、 アブラムはすべてを神にゆだねました。すなわち、神が彼に残された地がどこであっても、それを神の摂理に委ねたのです。(13:9)

5、神から、さらにすぐれた的確な祝福を受けました(13:14~17)。

創 13:14 ロトがアブラムと別れて後、【主】はアブラムに仰せられた。「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。
13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。
13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。
13:17 立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。」
12章1~3節と比べてみますと、さらにすゝんだ祝福に達していることが分かります。
創 12:1 【主】はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。
12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。
12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」
また14節には「見渡しなさい。」
17節には「歩き回りなさい。」
とあり、祝福を自分のものとするためには、見るばかりでなく、歩き回らなければなりません。

6、アブラムはソドムから遠く離れているヘブロンに住んでいました(13:18)。

創 13:18 そこで、アブラムは天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のそばに来て住んだ。そして、そこに【主】のための祭壇を築いた。
ヘブロンとは「交わり」の意味です。すなわち、神と交わりのある所こそ、信仰の人の住むべき所です。ロトのいた所とは正反対です。神はアブラムをヘブロンで「完全にし、聖く立たせ、強くし、不動の者」とされたのです(ペテロ第一5:10)。
Ⅰペテ 5:10 あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあってその永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみのあとで完全にし、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます。
(以上、創世記13章)

上の写真は、Bible Pictures with brief descriptions by Charles Foster(チャールズ・フォスターにより簡単な説明の付けられたバイブル・ピクチャー)の一枚「Abraham and Lot divided the land(アブラハムとロトは土地を分けた)」(1897年にアメリカのフィラデルフィアで出版された。Wikimedia Commonsより)