聖書の探求(201) ヨシュア記12章 イスラエルが征服した地理的範囲とその王たち

イスラエルのテル・メギドで発掘されたカナン時代の祭壇の遺跡。(2013年の訪問時に撮影)


この章は、イスラエルの征服の総括であり、彼らが征服した地理的範囲と、その王たちを記しています。

1節は、簡潔に、イスラエルが占領した地域を記していますが、「その地の王たちは次のとおりである。」と書き加えており、筆者の関心と強調点は、この章では、地理的範囲よりも、征服した王たちのリストに向けられているように思われます。

ヨシ12:1 イスラエル人は、ヨルダン川の向こう側、日の上る方で、アルノン川からヘルモン山まで、それと東アラバの全部を打ち、それを占領したが、その地の王たちは次のとおりである。

2,3節は、エモリ人の王シホンと、その領土を記しており、

ヨシ 12:2 エモリ人の王シホン。彼はヘシュボンに住み、アルノン川の縁にあるアロエル、川の中部とギルアデの半分、アモン人の国境のヤボク川までを支配していた。
12:3 またアラバを、東のキネレテ湖までと、東のアラバの海、すなわち塩の海、ベテ・ハエシモテの道まで、南はピスガの傾斜地のふもとまで支配していた。

4,5節は、レファイム人(巨人の種族、申命記2:10,11)の生き残りのひとりだったバシャンの王オグと、その領土を記しています。

ヨシ 12:4 また、レファイムの生き残りのひとりであったバシャンの王オグの領土。彼は、アシュタロテとエデレイに住み、
12:5 ヘルモン山、サルカ、ゲシュル人とマアカ人の国境に至るバシャンの全土、およびギルアデの半分、ヘシュボンの王シホンの国境までを支配していた。

6節、この二人の支配者とその領土は、神のしもべモーセとイスラエル人によって占領され、その広大な地は、モーセによって、ルベン人と、ガド人と、マナセの半部族に与えられています。

ヨシ 12:6 【主】のしもべモーセとイスラエル人とは彼らを打った。【主】のしもべモーセは、ルベン人と、ガド人と、マナセの半部族に、これらを所有地として与えた。

この記録がここに記されているのは、神の民の征服と所有地を正確にするためであったと思われます。

しかし、ここに、筆記者であるヨシュアは、彼の指導者であったモーセを、二度も「神のしもべ」と言っています。この「神のしもべ」という呼称は、最も尊敬と栄誉を表わすヨシュアの心を示しています。それはモーセという人物の信仰と神への服従の偉大さを物語っています。生涯、ずっとモーセに従って来たヨシュアの目には、モーセは「忠実な、そして神を愛している神のしもべ」として映っていたのです。

今日の私たちが聖書を読んでも、モーセには、「神のしもベ」という以上の称号をほかに見い出すのを困難に覚えます。イザヤ書では、イエス様の預言の中で、「主のしもべ」とイエス様を呼んでいます。これを考えても、「神のしもべ」と呼ばれることは、どんなに栄誉に満ち、愛と尊敬を示しているかが分かります。

私たちも、シホンやオグのような強敵の課題に直面することもあるでしょう。しかしあなたが、日頃から神の忠実なしもべとなっているなら、神はあなたに勝利を与えてくださるでしょう。

「しかし、私たちは、私たちを愛してくださった方によって、これらすべてのことの中にあっても、圧倒的な勝利者となるのです。」(ローマ8:37)

「おまえはわたしのしもべヨブに心を留めたか。彼のように潔白で正しく、神を恐れ、悪から遠ざかっている者はひとりも地上にはいないのだが。」(ヨブ記1:8)

こうして、神に忠実だった人々の名前も記され、また、神に逆らった人々の名前も記されていることは、人は死んでも、完全に忘れ去られてしまうものではないことを示唆しているように思われます。神に忠実に生きた、神のしもべは、その名前が神のみこころのうちに永遠に覚えられているに違いないし、神に逆らった人々、また神への信仰を悪用したり、乱用した人々は、神の道をはずれ暗闇の道を歩んだ人々の闇に自分の名前が書かれているのを見い出して嘆くに違いないのです。

エモリ人の王シホンは、イスラエルが彼の領土を通過することを拒否したことによって、イスラエルに征服されてしまいました(民数記21:21~35)。こうして、ヨルダンの東のアルノン川とヤボク川の間のエモリ人の地が、イスラエルの所有地となった(申命記1:4~7)と記されています。

レファイムの巨人の出身であったオグの王国のあったバシャンの全土も、マナセの半部族に与えられた(申命記3:13)ことが記されています。

この二つのイスラエルの勝利は、聖書の歴史の中で比較的重要な位置を占めており、聖書に何回も、彼らについて言及されています(列王記第一4:19、ネヘミヤ記9:22、詩篇135:11、詩篇136:19,20)。

これらの度重なる言及は、イスラエルがシホンとオグに勝利したのは、神が与えてくださったからであることを、後のイスラエルの子孫に認識させるためでした。これらの出来事を回顧させることによって、神に忠実に従う者には、神は必ず勝利を与えてくださることの確信を強めることが出来たのです。

7~24節は、ヨシュアとイスラエルの人々が征服した地域と王たち(カナンの31王)のリストです。

ヨシ 12:7 ヨシュアとイスラエル人とがヨルダン川のこちら側、西のほうで、レバノンの谷にあるバアル・ガドから、セイルへ上って行くハラク山までの地で打った王たちは、次のとおりである。──ヨシュアはこの地をイスラエルの部族に、所有地、その割り当ての地として与えた──
12:8 これらは、山地、低地、アラバ、傾斜地、荒野、およびネゲブにおり、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人であった。
12:9 エリコの王ひとり。ベテルのそばのアイの王ひとり。
12:10 エルサレムの王ひとり。ヘブロンの王ひとり。
12:11 ヤルムテの王ひとり。ラキシュの王ひとり。
12:12 エグロンの王ひとり。ゲゼルの王ひとり。
12:13 デビルの王ひとり。ゲデルの王ひとり。
12:14 ホルマの王ひとり。アラデの王ひとり。
12:15 リブナの王ひとり。アドラムの王ひとり。
12:16 マケダの王ひとり。ベテルの王ひとり。
12:17 タプアハの王ひとり。ヘフェルの王ひとり。
12:18 アフェクの王ひとり。シャロンの王ひとり。
12:19 マドンの王ひとり。ハツォルの王ひとり。
12:20 シムロン・メロンの王ひとり。アクシャフの王ひとり。
12:21 タナクの王ひとり。メギドの王ひとり。
12:22 ケデシュの王ひとり。カルメルのヨクネアムの王ひとり。
12:23 ドルの高地にいるドルの王ひとり。ギルガルのゴイムの王ひとり。
12:24 ティルツァの王ひとり。合計三十一人の王である。

この箇所には、新しい記事は何も含まれていません。恐らく、ヨシュアは戦勝の記録として整理して記録したのでしょう。

しかし、この記録は、神の民に対して、重要な教訓を与えたものと思われます。

1、神の民が、神に忠実であるなら、神の約束は必ず実現すること(申命記32:1~9)。

2、敵対するカナン人が根絶されて、その地が与えられることは、アブラハムの時代に約束されていたこと。神の約束は時が過ぎても無効になっていないこと(創世記15:13~21)

3、この勝利において、神が先頭に立って戦われ、積極的な役割を果たされたこと。この戦いは神の戦いであったこと。イスラエル人の自力では、決して得られない勝利であったことは、後々の子孫にも明らかになった。それ故、ヨシュアはここに、カナンの強敵の王31人の名前を記して、この記録こそ、神が約束されたことを、神ご自身が成し遂げてくださったことの証拠とすることが出来たのです。

ヨシュアがここに記した、神に反逆している者たちは、私たちが各々の信仰生涯において攻め取らなければならないもののヒナ型です。

「バプテスマのヨハネの日以来今日まで、天の御国は激しく攻められています。そして、激しく攻める者たちがそれを奪い取っています。」(マタイ11:12)

「あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。」(ヨハネ16:33)

「私は勇敢に戦い、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました。今からは、義の栄冠が私のために用意されているだけです。かの日には、正しい審判者である主が、それを私に授けてくださるのです。私だけでなく、主の現われを慕っている者には、だれにでも授けてくださるのです。」(テモテ第二4:7~8)

あとがき

今、世の中は凄絶な嵐が吹き荒れています。多くの人々は、もはや生きる望みさえ失っています。この嵐はクリスチャンの中にも及んでいます。今ほど、私たちが互いに愛し合い、悩みや苦しみも分ち合い、共に涙を流すことが必要な時はないと思っています。たとえ、何もできなくても、心を分ち合うことができるではありませんか。こうすることによって、私たちは、イエス様に愛されていることを実感することができるのです。他人をののしり、苦しめ、その上に自分の欲の満足を築こうとすることは止めなければなりません。私たちは、いつも、この上もない愛に包まれていたいのです。たとい厳しい状況に置かれていても、希望を持って生きるためには、これしかありません。Ⅰヨハネ3:11,14

(まなべあきら 2000.12.1)
(聖書箇所は【新改訳改訂第3版】を引用。)


 

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