聖書の探求(030b) 創世記34章 ヤコブの娘ディナの事件

この章はヤコブの娘ディナがヒビ人ハモルの子シェケムと問題を起こした事件を記しています。シェケムという名はアブラハムの時代に既に使われています(創世記12:6)。おそらく族長の中にシェケムという名をつける有力者がいて、その名を引き継いでいたものと思われます。

創 12:6 アブラムはその地を通って行き、シェケムの場、モレの樫の木のところまで来た。当時、その地にはカナン人がいた。

ヤコブはすぐにべテルに行って神との誓いを果たし、それから両親のいる所に帰るはずであったのに、自分の所有物に欲を出し、この世を慕って神の道をはずれてシェケムに行き、そこに家を建てて田地を買い、安楽に暮すようになりました。
これは実に不従順です。ペヌエルの経験をしたにも拘らず、このような堕落の状態にとどまっていては、必ずその結果を招かずには終わりません。34章では、彼の不従順による悲しむべき結果を記しています。

ディナとハモルの子シェケムとの事件を簡単に整理してみますと、

① 事件の背景(33:18~20)‥‥シェケム居住

創 33:18 こうしてヤコブは、パダン・アラムからの帰途、カナンの地にあるシェケムの町に無事に着き、その町の手前で宿営した。
33:19 そして彼が天幕を張った野の一部を、シェケムの父ハモルの子らの手から百ケシタで買い取った。
33:20 彼はそこに祭壇を築き、それをエル・エロヘ・イスラエルと名づけた。

② 事件の発端(34:1~4)‥‥不道徳

創 34:1 レアがヤコブに産んだ娘ディナがその土地の娘たちを訪ねようとして出かけた。
34:2 すると、その土地の族長のヒビ人ハモルの子シェケムは彼女を見て、これを捕らえ、これと寝てはずかしめた。
34:3 彼はヤコブの娘ディナに心をひかれ、この娘を愛し、ねんごろにこの娘に語った。
34:4 シェケムは父のハモルに願って言った。「この女の人を私の妻にもらってください。」

③ 事件の進展(34:5~17)‥‥ヤコブの息子たちの欺きの言葉

(a) ヤコブの反応(5節)
創 34:5 ヤコブも、彼が自分の娘ディナを汚したことを聞いた。息子たちはそのとき、家畜といっしょに野にいた。ヤコブは彼らが帰って来るまで黙っていた。

(b) ハモルの反応(6節)
創 34:6 シェケムの父ハモルは、ヤコブと話し合うために出て来た。

(c) ヤコブの子たちの反応(7、13~16節)
創 34:7 ヤコブの息子たちが、野から帰って来て、これを聞いた。人々は心を痛め、ひどく怒った。シェケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルの中で恥ずべきことを行ったからである。このようなことは許せないことである。

創 34:13 ヤコブの息子たちは、シェケムとその父ハモルに答えるとき、シェケムが自分たちの妹ディナを汚したので、悪巧みをたくらんで、
34:14 彼らに言った。「割礼を受けていない者に、私たちの妹をやるような、そのようなことは、私たちにはできません。それは、私たちにとっては非難の的ですから。
34:15 ただ次の条件であなたがたに同意しましょう。それは、あなたがたの男子がみな、割礼を受けて、私たちと同じようになることです。
34:16 そうすれば、私たちの娘たちをあなたがたに与え、あなたがたの娘たちを私たちがめとります。そうして私たちはあなたがたとともに住み、私たちは一つの民となりましょう。

④ 事件の終局(34:18~31)‥‥殺人

創 34:18 彼らの言ったことは、ハモルとハモルの子シェケムの心にかなった。
34:19 この若者は、ためらわずにこのことを実行した。彼はヤコブの娘を愛しており、また父の家のだれよりも彼は敬われていたからである。
34:20 ハモルとその子シェケムは、自分たちの町の門に行き、町の人々に告げて言った。
34:21 「あの人たちは私たちと友だちである。だから、あの人たちをこの地に住まわせ、この地を自由に行き来させよう。この地は彼らが来ても十分広いから。私たちは彼らの娘たちをめとり、私たちの娘たちを彼らにとつがせよう。
34:22 ただ次の条件で、あの人たちは私たちとともに住み、一つの民となることに同意した。それは彼らが割礼を受けているように、私たちのすべての男子が割礼を受けることである。
34:23 そうすれば、彼らの群れや財産、それにすべての彼らの家畜も、私たちのものになるではないか。さあ、彼らに同意しよう。そうすれば彼らは私たちとともに住まおう。」
34:24 その町の門に出入りする者はみな、ハモルとその子シェケムの言うことを聞き入れ、その町の門に出入りする者のすべての男子は割礼を受けた。
34:25 三日目になって、ちょうど彼らの傷が痛んでいるとき、ヤコブのふたりの息子、ディナの兄シメオンとレビとが、それぞれ剣を取って、難なくその町を襲い、すべての男子を殺した。
34:26 こうして彼らは、ハモルとその子シェケムとを剣の刃で殺し、シェケムの家からディナを連れ出して行った。
34:27 ヤコブの子らは、刺し殺された者を襲い、その町を略奪した。それは自分たちの妹が汚されたからである。
34:28 彼らは、その人たちの羊や、牛や、ろば、それに町にあるもの、野にあるものを奪い、
34:29 その人たちの全財産、幼子、妻たち、それに家にあるすべてのものを、とりこにし、略奪した。
34:30 それでヤコブはシメオンとレビに言った。「あなたがたは、私に困ったことをしてくれて、私をこの地の住民カナン人とペリジ人の憎まれ者にしてしまった。私には少人数しかいない。彼らがいっしょに集まって私を攻め、私を打つならば、私も私の家の者も根絶やしにされるであろう。」
34:31 彼らは言った。「私たちの妹が遊女のように取り扱われてもいいのですか。」

⑤ 事件の決着(35:1)‥‥神の指示(この事件から教えられる教訓)

創 35:1 神はヤコブに仰せられた。「立ってベテルに上り、そこに住みなさい。そしてそこに、あなたが兄エサウからのがれていたとき、あなたに現れた神のために祭壇を築きなさい。」

(この事件から教えられる教訓)

① 好奇心の危険(1節)

創 34:1 レアがヤコブに産んだ娘ディナがその土地の娘たちを訪ねようとして出かけた。

② 磨かれた品性を持たない指導者(2,3、19節)

創 34:2 すると、その土地の族長のヒビ人ハモルの子シェケムは彼女を見て、これを捕らえ、これと寝てはずかしめた。
34:3 彼はヤコブの娘ディナに心をひかれ、この娘を愛し、ねんごろにこの娘に語った。

34:19 この若者は、ためらわずにこのことを実行した。彼はヤコブの娘を愛しており、また父の家のだれよりも彼は敬われていたからである。

③ 子どものしつけ、教育、訓練の問題(4、6、8節)父ハモルは息子のシェケムを一度も叱っていません。

創 34:4 シェケムは父のハモルに願って言った。「この女の人を私の妻にもらってください。」
創 34:6 シェケムの父ハモルは、ヤコブと話し合うために出て来た。
創 34:8 ハモルは彼らに話して言った。「私の息子シェケムは心からあなたがたの娘を恋い慕っております。どうか彼女を息子の嫁にしてください。

④ ヤコブとヤコブの子らを比較することによって、人生経験の豊かな者と未熟な者の判断の違いが分かる(30,31節)。

創 34:30 それでヤコブはシメオンとレビに言った。「あなたがたは、私に困ったことをしてくれて、私をこの地の住民カナン人とペリジ人の憎まれ者にしてしまった。私には少人数しかいない。彼らがいっしょに集まって私を攻め、私を打つならば、私も私の家の者も根絶やしにされるであろう。」
34:31 彼らは言った。「私たちの妹が遊女のように取り扱われてもいいのですか。」

〔不従順の報酬〕

1、目の欲(34:1)

創 34:1 レアがヤコブに産んだ娘ディナがその土地の娘たちを訪ねようとして出かけた。

ヤコブには12人の息子がありましたが、娘はただ一人しかいませんでした。その娘ディナはきっと我侭に育てられていたのでしょう。彼女は家を出て、その地の娘たちを見に行きました。
テトス2章5節には、若い婦人は慎み深く、貞潔で、家事に励むように勧めています。

テトス 2:5 慎み深く、貞潔で、家事に励み、優しく、自分の夫に従順であるようにと、さとすことができるのです。それは、神のことばがそしられるようなことのないためです。

ところがディナは家を出て、異教の娘たちを見、その国の風俗や衣服の流行などを見に行ったのです。これはささいなことのようですが、目の欲です。

この小さい目の欲から大きな罪が出てくるのです。

① エバの罪も目の欲から始まり(3:6)

創 3:6 そこで女が見ると、その木は、まことに食べるのに良く、目に慕わしく、賢くするというその木はいかにも好ましかった。それで女はその実を取って食べ、いっしょにいた夫にも与えたので、夫も食べた。

② ロトの大きな災も目の欲が原因です(13:10)

創 13:10 ロトが目を上げてヨルダンの低地全体を見渡すと、【主】がソドムとゴモラを滅ぼされる以前であったので、その地はツォアルのほうに至るまで、【主】の園のように、またエジプトの地のように、どこもよく潤っていた。

③ イスラエルの全家をわずらわしたアカンの罪も目の欲から始まっており(ヨシュア記7:21)、

ヨシ 7:21 私は、分捕り物の中に、シヌアルの美しい外套一枚と、銀二百シェケルと、目方五十シェケルの金の延べ棒一本があるのを見て、欲しくなり、それらを取りました。それらは今、私の天幕の中の地に隠してあり、銀はその下にあります。」

④ ダビデの姦淫と殺人の恐るべき罪も目の欲から始まりました(サムエル第二11:2)。

Ⅱサム 11:2 ある夕暮れ時、ダビデは床から起き上がり、王宮の屋上を歩いていると、ひとりの女が、からだを洗っているのが屋上から見えた。その女は非常に美しかった。

2、肉の欲(2~5節)

創 34:2 すると、その土地の族長のヒビ人ハモルの子シェケムは彼女を見て、これを捕らえ、これと寝てはずかしめた。
34:3 彼はヤコブの娘ディナに心をひかれ、この娘を愛し、ねんごろにこの娘に語った。
34:4 シェケムは父のハモルに願って言った。「この女の人を私の妻にもらってください。」
34:5 ヤコブも、彼が自分の娘ディナを汚したことを聞いた。息子たちはそのとき、家畜といっしょに野にいた。ヤコブは彼らが帰って来るまで黙っていた。

目の欲は肉の欲につながっています。ディナが不信者と交際するのを許したヤコブは、不注意でした。段々と不信者と交際しているうちに、シェケムがディナを見て色情を抱いて、彼女を捕えて姦淫の罪を犯しました。ディナのほうについては何も記していませんけれども、恐らく彼女も同意したのでしょう。
ヤコブはこの出来事を聞いても黙っていましたが(5節)、どんなに心を苦しめたことでしょうか。
ヤコブは娘に対して不注意であったばかりでなく、シェケムから田畑を買って産業を営もうと考えていましたから、シェケムの地位や身分や、それにディナの我侭を思えば、シェケムに対して何も言うことができなかったのでしょう。
ヤコブが神に対して不従順な歩みをしていなければ、こういう苦しみはしなくてよかったのです。神のみ旨の道から離れると、必ずそれが苦しみの原因となります。

3、高慢と憎悪(6~12節)

創 34:6 シェケムの父ハモルは、ヤコブと話し合うために出て来た。
34:7 ヤコブの息子たちが、野から帰って来て、これを聞いた。人々は心を痛め、ひどく怒った。シェケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルの中で恥ずべきことを行ったからである。このようなことは許せないことである。
34:8 ハモルは彼らに話して言った。「私の息子シェケムは心からあなたがたの娘を恋い慕っております。どうか彼女を息子の嫁にしてください。
34:9 私たちは互いに縁を結びましょう。あなたがたの娘を私たちのところにとつがせ、私たちの娘をあなたがたがめとってください。
34:10 そうすれば、あなたがたは私たちとともに住み、この土地はあなたがたの前に開放されているのです。ここに住み、自由に行き来し、ここに土地を得てください。」
34:11 シェケムも彼女の父や兄弟たちに言った。「私はあなたがたのご好意にあずかりたいのです。あなたがたが私におっしゃる物を何でも差し上げます。
34:12 どんなに高い花嫁料と贈り物を私に求められても、あなたがたがおっしゃるとおりに差し上げますから、どうか、あの人を私の妻に下さい。」

シェケムは恐ろしい罪を犯したけれども、その後始末はヤコブの息子たちよりはましでした。ディナを辱しめたけれども、ディナと結婚することを申し出ました。できるだけその恥を除きたいと思ったのです。彼は、「どんなに高い花嫁料と贈り物を私に求められても、あなたがたがおっしゃるとおりに差し上げますから、どうか、あの人を私の妻に下さい。」(12節)と申し出て、どんなことをしてでも、その罪の始末をしたいと思っていました。勿論、この罪はそのようなことで解決できるものではないけれども、不信者としてはヤコブの子どもたちよりもましでした。
ディナの兄たちが非常に怒ったのは、シェケムのはなはだしい罪を憎んでというより、むしろ自分たちが面目を失ったことと、その高慢な心を辱しめられたからです。その動機ははなはだ卑劣で、非常に残酷な復讐をしました。
ヤコブの不従順の罪は、娘が汚されたばかりでなく、息子たちの怒りに燃えた復曹を引き起こしました。

4、偽善と冒涜(13~24節)

創 34:13 ヤコブの息子たちは、シェケムとその父ハモルに答えるとき、シェケムが自分たちの妹ディナを汚したので、悪巧みをたくらんで、
34:14 彼らに言った。「割礼を受けていない者に、私たちの妹をやるような、そのようなことは、私たちにはできません。それは、私たちにとっては非難の的ですから。
34:15 ただ次の条件であなたがたに同意しましょう。それは、あなたがたの男子がみな、割礼を受けて、私たちと同じようになることです。
34:16 そうすれば、私たちの娘たちをあなたがたに与え、あなたがたの娘たちを私たちがめとります。そうして私たちはあなたがたとともに住み、私たちは一つの民となりましょう。
34:17 もし、私たちの言うことを聞かず、割礼を受けないならば、私たちは娘を連れて、ここを去ります。」
34:18 彼らの言ったことは、ハモルとハモルの子シェケムの心にかなった。
34:19 この若者は、ためらわずにこのことを実行した。彼はヤコブの娘を愛しており、また父の家のだれよりも彼は敬われていたからである。
34:20 ハモルとその子シェケムは、自分たちの町の門に行き、町の人々に告げて言った。
34:21 「あの人たちは私たちと友だちである。だから、あの人たちをこの地に住まわせ、この地を自由に行き来させよう。この地は彼らが来ても十分広いから。私たちは彼らの娘たちをめとり、私たちの娘たちを彼らにとつがせよう。
34:22 ただ次の条件で、あの人たちは私たちとともに住み、一つの民となることに同意した。それは彼らが割礼を受けているように、私たちのすべての男子が割礼を受けることである。
34:23 そうすれば、彼らの群れや財産、それにすべての彼らの家畜も、私たちのものになるではないか。さあ、彼らに同意しよう。そうすれば彼らは私たちとともに住まおう。」
34:24 その町の門に出入りする者はみな、ハモルとその子シェケムの言うことを聞き入れ、その町の門に出入りする者のすべての男子は割礼を受けた。

ヤコブの不従順のためにディナが罪を犯し、恥辱と困難をひき起こしましたが、それはさらに悪い結果に発展していきました。
ディナの兄たちはシェケムに復讐しようとして残酷な策略を立てました。しかしその策略に神との厳かな契約を意味する割礼を用いました。すなわち、シェケムの人々が彼らと自由に交わり、ディナとシェケムが結婚できるために、シェケムと父とその町の人々に割礼を受けるように求めました。

これによって、はなはだしく神の御名を汚してしまったのです。

① 彼らは復讐のために、神との契約のしるしを用いました。

② 彼らが結婚の条件として割礼を求めたのは偽善です。

③ シュケムは心から神の契釣に与かるために割礼を受けるのではなく、ただ自分の好む女性と結婚するために、自分の都合のために、この厳かな契釣のしるしを受けようとしたのは神を冒涜しています。

④シェケムとその父ハモルは、町のすべての人々に割礼を受けるようにすゝめています。その動機は、そうすることによってヤコブ一家の財産がすべてシェケムの人々のものとなるからと言っています(22,23節)。個人の利益のために神聖な儀式を乱用するのは、神を冒涜しています。

⑤ 割礼は神の恵みと命を受ける手段であったのに、これを殺人と略奪の手段としたのです。シェケムの人々は、苦しめられて、何の防御も抵抗もできずに死のうとしている時、どんなに神の御名をのろい、割礼をののしったことでしょう。ヤコブの子どもたちは、異教人をして神をのろわせたのです。これ以上に神の御名を汚すことはありません。

5、殺人(25,26節)

創 34:25 三日目になって、ちょうど彼らの傷が痛んでいるとき、ヤコブのふたりの息子、ディナの兄シメオンとレビとが、それぞれ剣を取って、難なくその町を襲い、すべての男子を殺した。
34:26 こうして彼らは、ハモルとその子シェケムとを剣の刃で殺し、シェケムの家からディナを連れ出して行った。

ヤコブの息子たちは、シュケムの人々に割礼を施して動くことができないようにしておいて、ディナを取り返し、それと同時に彼らの財産を略奪するつもりだったのでしょうが、シメオンとレビ(ディナと同じ母の兄たち)はそれで満足せず、残酷な復讐をしたのです。これによってどれほどヤコブが苦しんだか分かりません。神の御名がこれによって汚されたということは言うまでもないことですが、ヤコブの名前もその国で憎まれるようになりました。

6、略奪(27~29節)

創 34:27 ヤコブの子らは、刺し殺された者を襲い、その町を略奪した。それは自分たちの妹が汚されたからである。
34:28 彼らは、その人たちの羊や、牛や、ろば、それに町にあるもの、野にあるものを奪い、
34:29 その人たちの全財産、幼子、妻たち、それに家にあるすべてのものを、とりこにし、略奪した。

シェケム人を殺したのはシメオンとレビであって、ほかの兄弟たちは手を出さなかったかもしれませんが、シェケム人が殺されると、彼らは直ちに出て行ってシェケム人の財産を奪いました。彼らはディナのために復讐するだけでなく、自分たちの心の貧欲を満たすつもりであったに違いありません。なんと、あさましい心でしょうか。

7、恐怖と恥辱(30,31節)

創 34:30 それでヤコブはシメオンとレビに言った。「あなたがたは、私に困ったことをしてくれて、私をこの地の住民カナン人とペリジ人の憎まれ者にしてしまった。私には少人数しかいない。彼らがいっしょに集まって私を攻め、私を打つならば、私も私の家の者も根絶やしにされるであろう。」
34:31 彼らは言った。「私たちの妹が遊女のように取り扱われてもいいのですか。」

ヤコブの不従順は恐ろしい結果をつくってしまいました。目の欲、肉の欲、高慢、憎悪、偽善、冒涜、殺人、略奪、これらがその結果です。

30節のヤコブの言葉の中には、「私」が七回も使われています。シメオンとレビのしわざのために、ヤコブがカナン人とペリジ人とに憎まれ、彼らが攻撃してきて、自分と家族とを滅ぼしてしまうだろうと恐れています。

創世記49章5~7節では、シメオンとレビの罪と残酷さをよく覚えていたけれども、この時は彼らの罪を責めず、ただ自分の恐怖と恥辱のために、あわれな心で語っています。

創 49:5 シメオンとレビとは兄弟、彼らの剣は暴虐の道具。
49:6 わがたましいよ。彼らの仲間に加わるな。わが心よ。彼らのつどいに連なるな。彼らは怒りにまかせて人を殺し、ほしいままに牛の足の筋を切ったから。
49:7 のろわれよ。彼らの激しい怒りと、彼らのはなはだしい憤りとは。私は彼らをヤコブの中で分け、イスラエルの中に散らそう。

ヤコブは自分の不従順な心と行ないのために、様々な苦しい経験を通ってきましたが、この時は最も苦しい経験であったに違いありません。
神の光を受ければ受けるほど、責任は重くなります。ヤコブがペヌエルで大なる恵みを受け、自分の今までの生涯が間違っていたことを自覚し、これまでにない新しい光を受けたのに、なおも自分の知恵で工夫し、謀略をめぐらし、この世のものをむさぼり、神のみ旨を知りつつ、それに背き、神の示された道からはずれ、不従順の道に従ったのですから、ヤコブが苦しんだのは当然です。これによって、私たちは、神から警戒と教訓を受けた後、不従順になることが、どんなに恐ろしいものであるかを知らなければなりません。

(以上、創世記34章、聖書箇所は【新改訳改訂第3版】を引用しました。)

上の写真は、フランスの画家 James Tissot (1836-1902)が描いた「The Seduction of Dinah, Daughter of Leah(レアの娘ディナの誘惑)」(アメリカ、ニューヨークのthe Jewish Museum蔵、Wikimedia Commonsより)

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