聖書の探求(050b) 出エジプト記 エジプト滞在期間について

〔エジプト滞在期間について、互いに食い違っている聖書の記録はどう調和できるか?〕

Ⅰ.創世記15:13

創 15:13 そこで、アブラムに仰せがあった。「あなたはこの事をよく知っていなさい。あなたの子孫は、自分たちのものでない国で寄留者となり、彼らは奴隷とされ、四百年の間、苦しめられよう。

神はアブラムに、彼の子孫は外国で寄留者となって、四百年間苦しめられると忠告しました。ステパノはサンヘドリンの前で弁証した時、この預言を引用して、これをエジプトの圧制として取り扱っています(使徒7:6~19)。

使 7:6 また神は次のようなことを話されました。『彼の子孫は外国に移り住み、四百年間、奴隷にされ、虐待される。』
7:7 そして、こう言われました。『彼らを奴隷にする国民は、わたしがさばく。その後、彼らはのがれ出て、この所で、わたしを礼拝する。』
7:8 また神は、アブラハムに割礼の契約をお与えになりました。こうして、彼にイサクが生まれました。彼は八日目にイサクに割礼を施しました。それから、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブに十二人の族長が生まれました。
7:9 族長たちはヨセフをねたんで、彼をエジプトに売りとばしました。しかし、神は彼とともにおられ、
7:10 あらゆる患難から彼を救い出し、エジプト王パロの前で、恵みと知恵をお与えになったので、パロは彼をエジプトと王の家全体を治める大臣に任じました。
7:11 ところが、エジプトとカナンとの全地にききんが起こり、大きな災難が襲って来たので、私たちの父祖たちには、食物がなくなりました。
7:12 しかし、ヤコブはエジプトに穀物があると聞いて、初めに私たちの父祖たちを遣わしました。
7:13 二回目のとき、ヨセフは兄弟たちに、自分のことを打ち明け、ヨセフの家族のことがパロに明らかになりました。
7:14 そこで、ヨセフは人をやって、父ヤコブと七十五人の全親族を呼び寄せました。
7:15 ヤコブはエジプトに下り、そこで彼も私たちの父祖たちも死にました。
7:16 そしてシケムに運ばれ、かねてアブラハムがいくらかの金でシケムのハモルの子から買っておいた墓に葬られました。
7:17 神がアブラハムにお立てになった約束の時が近づくにしたがって、民はエジプトの中にふえ広がり、
7:18 ヨセフのことを知らない別の王がエジプトの王位につくときまで続きました。
7:19 この王は、私たちの同胞に対して策略を巡らし、私たちの父祖たちを苦しめて、幼子を捨てさせ、生かしておけないようにしました。

創 15:16 そして、四代目の者たちが、ここに戻って来る。それはエモリ人の咎が、そのときまでに満ちることはないからである。」

「四代目の者たちが、ここに戻って来る」(創世記15:16)。これは苦難が明らかにカナン国外であったこと、そしてその終わりにおいて、彼の子孫たちは自分たちの地に復帰することを示しています。普通「
代」という語は、百年の期間と同義語で用いられています。

Ⅱ.出エジプト記12:40,41には、エジプト滞在の期間は四百三十年だと記されています。

出 12:40 イスラエル人がエジプトに滞在していた期間は四百三十年であった。
12:41 四百三十年が終わったとき、ちょうどその日に、【主】の全集団はエジプトの国を出た。

Ⅲ.出エジプト記6章と民数記3章のモーセとアロン(レビ族)の一族の系図は、エジプト滞在の期間を215年に短縮しているのでしょうか?

この系図には、節が省略されているのが認められます。この系統は、ヤコブ-レビ-ケハテ-アムラム-モーセです。

出 6:18 ケハテの子はアムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルである。ケハテの一生は百三十三年であった。

出エジプト記6章18節によると、ケハテの子は、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルです。これら四人の子孫は、男子だけで出エジプトの時には八千六百人です(民数記3:28)。

民 3:27 アムラム族、イツハル族、ヘブロン族、ウジエル族はケハテに属し、これらがケハテ人の諸氏族であった。
3:28 これらの一か月以上のすべての男子を数えると、八千六百人であった。彼らが聖所の任務を果たす者である。

もしこの四分の一がモーセの父アムラムから出たとすれば、アムラムの子孫は男子だけで二千人を越えることになります。これに女子を加えると、その数は一家族で四千人以上になります。一代の間に一組の夫婦から四千人の子孫が生まれることは考えられません。ですから、この五代の間には、省略されている系図があるはずです。

歴代誌第一7:23~27において、出エジプト記6章と同時代のエフライムの系図が記されています。

Ⅰ歴代 7:23 その後、エフライムは、妻のところに入った。彼女はみごもって男の子を産んだ。彼はその子をベリアと名づけた。その家がわざわいのさなかにあったからである。
7:24 彼の娘はシェエラであった。彼女は上および下ベテ・ホロン、およびウゼン・シェエラを建てた。
7:25 彼の子はレファフ、レシェフ。その子はテラフ、その子はタハン、
7:26 その子はラダン、その子はアミフデ、その子はエリシャマ、
7:27 その子はヌン、その子はヨシュア。

この表によれば、ヤコブとヌンの子ヨシュア(モーセの従者)の間に、少なくとも十代の世代があります。しかも、ヨシュアは出エジプトの時には成人であったのです。

出エジプト記6章においては、ヤコブとモーセの間の同期間には、わずか五代が記されているだけです。この出エジプト記6章と歴代誌第一7:23~27の系図の違いは、どう調和させることができるのでしょうか?これは、出エジプト記6章の人名表が完全ではなく、ヤコブとモーセの間に、実在していたある人物たちが省略されているのです。聖書の系図の中には、こういう省略は稀ではありません。その最も重要な例は、マタイの福音書1章におけるイエス・キリストの系図です。8節で、ヨラムとウジヤとの間に、アハズヤ、ヨアシュ、アマツヤの三代が省略されています。

マタ 1:8 アサにヨサパテが生まれ、ヨサパテにヨラムが生まれ、ヨラムにウジヤが生まれ、
1:9 ウジヤにヨタムが生まれ、ヨタムにアハズが生まれ、アハズにヒゼキヤが生まれ、

Ⅳ.ガラテヤ3:17

ガラ 3:17 私の言おうとすることはこうです。先に神によって結ばれた契約は、その後四百三十年たってできた律法によって取り消されたり、その約束が無効とされたりすることがないということです。

もしエジプト滞在期間を四百三十年とするなら、ガラテヤ3:17のパウロの言葉は、どう理解したらいいのでしょうか。
もしパウロが言った四百三十年を、神がアブラムと契約を初めて結ばれた(創世記15章)時から起算したものだとすれば、パウロはその年代記を、この契約締結と出エジプトとの期間をおよそ六百四十五年としたモーセやステパノと対立することになります。
もし、モーセとステパノが正しければ、パウロの年代記述と二百年以上の差があることになります。しかしパウロはテモテ第二3:16において「聖書はすべて、神の霊感によるもので」あることを語った人であり、自分の教示することはすべてイエス・キリストご自身の教示と同等の権威があると宣言(コリント第一7:25、40)した人ですから、よく精通した年代で二百年以上も間違えることは考えられないことです。

Ⅱテモ 3:16 聖書はすべて、神の霊感によるもので、教えと戒めと矯正と義の訓練とのために有益です。

Ⅰコリ 7:25 処女のことについて、私は主の命令を受けてはいませんが、主のあわれみによって信頼できる者として、意見を述べます。
Ⅰコリ 7:40 私の意見では、もしそのままにしていられたら、そのほうがもっと幸いです。私も、神の御霊をいただいていると思います。

この間題を解く鍵は、パウロが用いた「先に結ばれ」という原語にあります。この語「プロクロー」は、新約聖書においても、ギリシャ語訳旧約聖書においても、事物の創設や、最初の取扱いを表わすために用いられたことはありません。この語は、既に存在している事物を認知し、確証することを示しています。

(この用法の一例)

創世記23章で、アブラハムがエフロンの土地を買い、証人の前で契約して代価を払った。こうしてこれが「アブラハムの所有と確認された。」(18節、七十人訳)そして、サラの埋葬は(19節)、すでに双方の間で結んでいた取引きを承認したことを意味しています。

創 23:18 その町の門に入って来たすべてのヘテ人たちの目の前で、アブラハムの所有となった。
23:19 こうして後、アブラハムは自分の妻サラを、カナンの地にある、マムレすなわち今日のヘブロンに面するマクペラの畑地のほら穴に葬った。

さて、パウロが言っている「契約」の
(1) 最初の締結は、創世記15章に記されています。これには、厳粛な犠牲と神のみ声と超自然の暗闇が伴いました。
(2) その後、創世記17章で、再度、契約のみことばが語られ、割礼を受けることによって、この契約は確証されました。
(3) さらに、22章でアブラハムがイサクを献げた時に、再び確証されました。
(4) さらに、この契約はイサクによって確証されました(26章)。
(5) 続いて、べテルにおいて、ヤコブによって確証されました(28、35章)。
(6) 最後の確証は、ヤコブがヨセフから送られた迎えの車に乗ってエジプトに下る途中においてでした(46:1~7)。

創 46:1 イスラエルは、彼に属するすべてのものといっしょに出発し、ベエル・シェバに来たとき、父イサクの神にいけにえをささげた。
46:2 神は、夜の幻の中でイスラエルに、「ヤコブよ、ヤコブよ」と言って呼ばれた。彼は答えた。「はい。ここにいます。」
46:3 すると仰せられた。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトに下ることを恐れるな。わたしはそこで、あなたを大いなる国民にするから。
46:4 わたし自身があなたといっしょにエジプトに下り、また、わたし自身が必ずあなたを再び導き上る。ヨセフの手はあなたの目を閉じてくれるであろう。」
46:5 それから、ヤコブはベエル・シェバを立った。イスラエルの子らは、ヤコブを乗せるためにパロが送った車に、父ヤコブと自分たちの子や妻を乗せ、
46:6 また彼らは家畜とカナンの地で得た財産も持って行った。こうしてヤコブはそのすべての子孫といっしょにエジプトに来た。
46:7 すなわち、彼は、自分の息子たちと孫たち、自分の娘たちと孫娘たち、こうしてすべての子孫を連れてエジプトに来た。

このように契約の確証が繰り返されたことは、神の選ばれた契約の首長としてのアブラハムが、イサクやヤコブと一緒に、聖書中に繰り返し記されていることの意味を明らかにしてくれます(出エジプト2:24、6:3~8、32:13、レビ26:42、歴代誌第一16:16,17)。

出 2:24 神は彼らの嘆きを聞かれ、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。

出 6:3 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに、全能の神として現れたが、【主】という名では、わたしを彼らに知らせなかった。
6:4 またわたしは、カナンの地、すなわち彼らがとどまった在住の地を彼らに与えるという契約を彼らに立てた。
6:5 今わたしは、エジプトが奴隷としているイスラエル人の嘆きを聞いて、わたしの契約を思い起こした。
6:6 それゆえ、イスラエル人に言え。わたしは【主】である。わたしはあなたがたをエジプトの苦役の下から連れ出し、労役から救い出す。伸ばした腕と大いなるさばきとによってあなたがたを贖う。
6:7 わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。あなたがたは、わたしがあなたがたの神、【主】であり、あなたがたをエジプトの苦役の下から連れ出す者であることを知るようになる。
6:8 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると誓ったその地に、あなたがたを連れて行き、それをあなたがたの所有として与える。わたしは【主】である。」

レビ 26:42 わたしはヤコブとのわたしの契約を思い起こそう。またイサクとのわたしの契約を、またアブラハムとのわたしの契約をも思い起こそう。そしてわたしはその地をも思い起こそう。

Ⅰ歴代 16:16 その契約はアブラハムと結んだもの、イサクへの誓い。
16:17 主はヤコブのためにそれをおきてとして立て、イスラエルに対する永遠の契約とされた。

しかし、この三人以外のほかの人は契約の当事者ではあり得ない。最初の契約の締結においては、アブラハムひとりが立っていた。イサクとヤコブは、その後に続いて起きた行動において、神がその契約のみことばを新にし、押し広げたのです。そして、これらの続く行為が、パウロがガラテヤ3章17節で語っている確証であり、承認なのです。最後の確証は、ヤコブがエジプトに下る途中、ベエル・シェバにおいて神の顕現と共に宣言されたもの(創世記46:2~4)です。

創 46:2 神は、夜の幻の中でイスラエルに、「ヤコブよ、ヤコブよ」と言って呼ばれた。彼は答えた。「はい。ここにいます。」
46:3 すると仰せられた。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトに下ることを恐れるな。わたしはそこで、あなたを大いなる国民にするから。
46:4 わたし自身があなたといっしょにエジプトに下り、また、わたし自身が必ずあなたを再び導き上る。ヨセフの手はあなたの目を閉じてくれるであろう。」

パウロがこの時を基点にして彼の四三〇年という年数を算出したことはあり得ることです。それ故、パウロが示した年数は、神がアブラハムと最初に契約を締結された時から出エジプトまでの年数ではなく、イスラエル人がエジプトに滞在した期間の四三〇年を表わしているのです(出エジプト12:40,41)。

出 12:40 イスラエル人がエジプトに滞在していた期間は四百三十年であった。
12:41 四百三十年が終わったとき、ちょうどその日に、【主】の全集団はエジプトの国を出た。

したがって、パウロは年代の上でも、モーセやステパノと完全に一致しています。

(まなべあきら 1988.5.1)
(聖書箇所は【新改訳改訂第3版】を引用。)

上の写真は、ヨセフの時代(BC1900~1800年頃)のエジプトの地図。ヤコブ一族は、ナイル川デルタの東側にあるゴシェンの地に住んだとされる。(いのちのことば社刊、ニック・ペイジ著、「バイブル・ワールド、地図でめぐる聖書」より)


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