聖書の探求(126a) 民数記34章 イスラエルのカナンでの相続地の範囲とその境界線

この章は、イスラエルのカナンでの相続地の範囲とその境界線が記されています。

イスラエルに与えられる相続地は、自分たちで占領できる所なら、どこでもよいということではありませんでした。神のご計画ははっきりしていました。このような相続地の境界線は、カナンの地を目前にするまでは示されませんでした。しばしば、主が導かれる時、その地がどこであるか、はっきり決定するのは、その直前です。アブラハムもその行く先を知らないまま、主のご命令に従って、出て行ったのです(ヘブル11:8)。

ヘブル 11:8 信仰によって、アブラハムは、相続財産として受け取るべき地に出て行けとの召しを受けたとき、これに従い、どこに行くのかを知らないで、出て行きました。

しかし私たちにゆだねられている福音宣教の領域は、全世界です。それとともに、各々が置かれている地域、家庭、職場、学校における宣教活動をしっかり行わなければなりません。

1~12節にみられる南西北東の順序の境界線は、今日、はっきりしないところもあります。

民 34:1 【主】はモーセに告げて仰せられた。
34:2 「イスラエル人に命じて、彼らに言え。あなたがたがカナンの地に入るとき、あなたがたの相続地となる国、カナンの地の境界は次のとおりである。

3~5節、南側。

民 34:3 あなたがたの南側は、エドムに接するツィンの荒野に始まる。南の境界線は、東のほうの塩の海の端に始まる。
34:4 その境界線は、アクラビムの坂の南から回ってツィンのほうに進み、その終わりはカデシュ・バルネアの南である。またハツァル・アダルを出て、アツモンに進む。
34:5 その境界線は、アツモンから回ってエジプト川に向かい、その終わりは海である。

死海の南端のエドムに接するツインの荒野から始まって、エドムの西の境界をまわり、カデシュ・バルネアの南まで来る。そこから北西に向かってエジプトの川(ワディ・エルアリシュ)に沿っている。この川は、川というより、乾いた低地で、ガザの南西約七十KMのところで地中海に注いでいます。要するに、ネゲブ地方が南の地域ということになります。

6節、西側。

民 34:6 あなたがたの西の境界線は、大海とその沿岸である。これをあなたがたの西の境界線としなければならない。

地中海とその沿岸です。しかし、この沿岸がどこからどこまでなのかは、はっきりしていません。

7~9節、北側。

民 34:7 あなたがたの北の境界線は、次のとおりにしなければならない。大海からホル山まで線を引き、
34:8 さらにホル山からレボ・ハマテまで線を引き、その境界線の終わりはツェダデである。
34:9 ついでその境界線は、ジフロンに延び、その終わりはハツァル・エナンである。これがあなたがたの北の境界線である。

地中海からホル山(この北部のホル山はアロンが死んだホル山(20:22)ではない。しかしこの北部のホル山は確認されていない。)まで線を引き、ホル山からレボ・ハマテ、ツェダデ、ジフロンを通ってハツァル・エナンに達しています。これらの地は今日、明らかではありませんが、「ハツァル・エナン」は「線の囲い」という意味ですから、ヨルダン川の上流にあったものと思われます。

10~12節、東側。

民 34:10 あなたがたの東の境界線としては、ハツァル・エナンからシェファムまで線を引け。
34:11 その境界線は、シェファムからアインの東方のリブラに下り、さらに境界線は、そこから下ってキネレテの海の東の傾斜地に達し、
34:12 さらにその境界線は、ヨルダンに下り、その終わりは塩の海である。以上が周囲の境界線によるあなたがたの地である。」

ハツァル・エナンから南下してキネレテの海(ガリラヤ、ゲネサレ湖)に進みます。途中のシェファムとリブラは今日、確認できません。キネレテからヨルダンに沿って塩の海(死海)に至ります。これらの位置から想像すると、神が与えられた相続地は、地中海の東岸に沿って幅五十~七十KMの細長い土地であったことが分かります。

主はこのように相続地の境界線を引いて下さったのですが、イスラエルの民は実際には、これらの土地を完全には占領しませんでした。そのことはヨシュア記15~19章に記されています。彼らは自分たちの領地内に異教の民を残しておいたり、怠慢になって占領しなかった部分がかなりありました。これらの残っていた異教の民が、後にしばしばイスラエル人の偶像礼拝のきっかけとなってしまいました。

教会の中にも、このような異教の要素が残っていないか、侵入してこないか点検しなければなりません。救われたと言えども、長い間、この世の生活をして、この世の性質と原理を身につけている人が教会員となってくるのですから、たえず点検して取り除いていく必要があります。これが残っていると、必ず、それが滅亡の原因となっていくのです。願わくは、幼い時に救われて、神の道を歩み続けて、この世を教会に持ち込まないクリスチャンが増えることを切に望む者です。

「そういうわけですから、愛する人たち、いつも従順であったように、私がいるときだけでなく、私のいない今はなおさら、恐れおののいて自分の救いを達成してください。」(ピリピ2:12)

13~15節は、これらの地を九部族半に与えるように命じられています。

民 34:13 モーセはイスラエル人に命じて言った。「これが、あなたがたがくじを引いて相続地とする土地である。【主】はこれを九部族と半部族に与えよと命じておられる。
34:14 ルベン部族は、その父祖の家ごとに、ガド部族も、その父祖の家ごとに相続地を取っており、マナセの半部族も、受けているからである。
34:15 この二部族と半部族は、ヨルダンのエリコをのぞむ対岸、東の、日の出るほうに彼らの相続地を取っている。」

ルベンとガドとマナセの半部族は、既に除かれています。

16~29節、相続の実施にたずさわる人々

17節、まず、土地分割の作業をする委員会が作られ、その総括は祭司エルアザルとヌンの子ヨシュアに委ねられています。

民 34:16 【主】はモーセに告げて仰せられた。
34:17 「この地をあなたがたのための相続地とする者の名は次のとおり、祭司エルアザルとヌンの子ヨシュアである。

これには軍事的、政治的指導者であったヨシュアだけでなく、宗教的リーダーの祭司エルアザルが任命されています。しかもエルアザルの名が先に記されています。これは、カナン占領に至るまでのリーダーシップはヨシュアがとっていますが、占領後の信仰生活のり-ダーシップは祭司エルアザルの手に握られるからです。いつでも政治的リーダーが、霊的リーダーの先に立つ時、民は世俗化して、主から心が離れていきます。

18~29節は、各部族が土地を相続するための代表者が任命されています。

民 34:18 あなたがたは、この地を相続地とするため、おのおのの部族から族長ひとりずつを取らなければならない。
34:19 その人々の名は次のとおりである。ユダ部族からは、エフネの子カレブ。
34:20 シメオン部族からは、アミフデの子サムエル。
34:21 ベニヤミン部族からは、キスロンの子エリダデ。
34:22 ダン部族からは、族長として、ヨグリの子ブキ。
34:23 ヨセフの子孫、マナセ部族からは、族長として、エフォデの子ハニエル。
34:24 エフライム部族からは、族長として、シフタンの子ケムエル。
34:25 ゼブルン部族からは、族長として、パルナクの子エリツァファン。
34:26 イッサカル部族からは、族長として、アザンの子パルティエル。
34:27 アシェル部族からは、族長として、シェロミの子アヒフデ。
34:28 ナフタリ部族からは、族長として、アミフデの子ペダフエル。
34:29 イスラエル人にカナンの地で相続地を持たせるよう【主】が命じたのはこの人々である。」

聖書中のこのような代表者はみな、神の任命によって決められています。それは人々の評価や人気よりも、本質的信仰が重要であったからです。それ故、ここに記されている人は、ひとり一人、主によってその信仰が認められた人々です。19節のエフネの子カレブは、カデシュ・バルネアでの信仰の報告の故に、ユダ族の代表に選ばれています。信仰の価値は永遠です。四〇年後にも、ちゃんと報われています。

「こういうわけで、いつまでも残るものは信仰と希望と愛です。その中で一番すぐれているのは愛です。」(コリント第一13:13)

他の人々もみな、主がともにおられることを意味する名前を持っています。

20節、サムエル、「神の名」あるいは「神に聞かれる」
21節、エリダデ、「神は愛された」
22節、ブキ、「(神の)証認」
23節、ハニエル、「神の好意」
24節、ケムエル、「神による賞賛」
25節、エリツァファン、「私の神は守られる」
26節、パルティエル、「神は私の解放」
27節、アヒフデ、「主権者の兄弟」
28節、ペダフエル、「神は解放された」

これらの人々は、神の任命によって、各部族の代表者として選ばれた人々です。これには各々の信仰が基準になっています。彼らは人々の選挙によって選ばれたのではなく、神によって任命されたのです。聖書中、人間の選挙によって神の人が選ばれたことは一度もありません。すべては神御自身の任命によっているのです。私たちの教会にも、このように神の任命を受けるにふさわしい信仰者が続々と育ってほしいものです。

(まなべあきら 1994.1.1)
(聖書箇所は【新改訳改訂第3版】を引用。)

上の図は、ヨシュア記による「The twelve tribes of Israel(イスラエルの12部族)」の地図、ヘブライ語版を英語訳したもの(Wikimedia Commonsより)


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